「シュッ」を聞いて思いだしたのか

 朝食に豚の生姜焼きが出た。夫はタモリレシピの生姜焼きを作るのが好きなようで、予告なくカジュアルに作る。朝に出るのも初めてではない。うまい。モリモリ食べて、バテている金曜の朝にスタミナがついた。

 家で仕事。9時に始めて19時に終える。そのうち6時間は打ち合わせだった。昼休憩もとりそびれ、もう頭がまわらない。今週はずっと、どうしたらよいかの試行錯誤週だった。来週もたぶんそう。

 終業ボタンを押してそのまま床に大の字になっていると、夫から退勤連絡。「祭りとか行きたいよな」と返すと、荷物を置きにいったん帰る、と返信あり。お、行ってくれる気だな。

 帰宅した夫と阿佐ヶ谷の七夕まつりへ。着いたのは20時15分ごろ。まだまだにぎわっている。とりいそぎ酒屋が出してる生ビールの白穂乃果とソラチを買って乾杯。商店街アーケードの天井からさがる張りぼてを指さしながら歩きつつ、目につくうまそうなものを片っ端から買って食べた。大きいさつま揚げ、鶏の竜田揚げ、つくね、カルダモンサワー、日本酒サングリア。イタリア料理屋がだしているニンニクがしっかり効いたトマトスパゲッティとテリーヌがやけにうまかった。以前ここを歩いた時はなかった初めて見る店だ。こんど普通の日にも食べにきてみたい。

 すれちがう人が串のイカ焼きを手に持っている。あれ食べたいねと言いあって、売ってる店にたどりつくと10メートルほどの列ができていた。我々も列の最後尾に並んだが、数秒立っただけですぐやめた。よく考えたらもう満腹だ。
 イカ焼きの列を離れてまた歩きだすと、こんどはりんご飴の店やシロップをかけただけのシンプルかき氷の店に長蛇の列ができているのに気づく。夫はあんず飴を食べたがって、それは2人待ちぐらいだったので買うことにした。夫は赤いスモモの飴をえらび、水飴をてろ〜とのばして食べて満足そうだった。もっとめずらしくておいしい料理をだしている店はたくさんあるだろうに、けっきょく人は祭りのアイコンのような食べものに惹かれるのらしい。

 帰宅しシャワーを浴び、化粧水マスクを顔にはりつけて布団のうえに仰向けになる。マスクが乾いてきて、はがす。起き上がれない。横着して、離れているゴミ箱へ「シュッ」と声をつけて投げた。入らなかったので起き上がって、ちゃんと捨てる。
 その「シュッ」を聞いて思いだしたのか、隣にいた夫がビートルズの『Come Together』を歌いはじめた。