こやまくんの話題でもちきり

 最高気温17℃だそうだ。
 2月の終わりは春が飛び出てくることがある。例年そうだったかはわからないが、5年前、2017年2月26日の日曜日が暑かったことはよくおぼえている。前夜に決めていた厚手のワンピースをその日の朝に着てみたらなんだか重たく感じ、春向けの軽めのワンピースに変え、スプリングコートを着てでかけたのだ。日が暮れる前の解散で、帰りはそのコートを手に持って帰ってきた。両家の顔合わせ食事会だった。わたしたちは結婚式をしていない。新宿の天ぷら屋でお互いの親やきょうだいや甥や姪を紹介し、わいわいと食事をして、誰もなれそめなどを聞いてこず、それではこの二人でやっていきますのでよろしくと挨拶して式の代わりとした。あの日を思う暖かさだ、今日は。

 8時に布団をでて洗濯物を干し、ベーコンエッグと大根の漬物をおかずにお茶漬けで朝ごはんとする。朝刊の一面見出しは”首都キエフ、市街戦 退避10万人、死者198人に 「停戦協議」実現せず ウクライナ”。夫もわたしも特に何も言わないが、ここのところ2人とも朝すぐに新聞を読むようになった。
 録画をみる。昨夜は『お笑い向上委員会』と『そろそろ にちようチャップリン』どちらにもランジャタイが出ていた。にちようチャップリンでランジャタイが披露した漫才「ヘビがこわい」には”こやまくん”というキャラクターが出てくるのだが、漫才後、これを観ていたウッチャンと千鳥と土田さんは”こやまくん”の話題でもちきりになった。

www.youtube.com
↑ランジャタイ「ヘビがこわい」。公式YouTube版では『そろそろ にちようチャップリン』版にはなかった、伊藤ちゃんを疑うくだりが長い。

 昼すぎ、夫が台所で仕事の電話を長めにしている。わたしは台所でがしゃがしゃやるのも気が引けて、なにか外で食べるものを買ってこようと出かけるしたくをしていたら、こちらがコートを着てマスクをする頃には夫も電話がおわり、あ、買い物? 俺も行くとコートをマスクをつかんで玄関にきた。二人ともコートは昨日より軽めのものを羽織った。玄関を出ると空気がひんやりしているていどで気持ちがよい。

 「まだ歩いていない道を行こう」と夫。ウォーキングゲームアプリ「ピクミンブルーム」の中でのことを言っている。
 南側の隣街まで歩き、テレビで知ったパン屋が近くにあると気づいて向かったら行列ができていた。まあ暖かいから行列に並んでもいいかなと思い我々も行列の最後尾についたが、3分ほど経って「べつにここを目指してきたわけでもないしな」という気持ちにすぐなり、列を抜けた。
 夫が「このあたりの店は雑誌によく載ってるみたい。印がいっぱいついてる」とiPhoneに映したGoogleマップを見せてくれた。雑誌で気になる飲食店情報を見かけるたびにせっせと印をつけていたらしい。我々が今いるところ一帯に緑の旗(=行ってみたいマーク)がたくさん立っている。なんの目当てもなく(強いていえばピクミンブルームでまだ歩いてない道を求めて)来たが、ずいぶん良いところにいるとわかり、にわかにミーハー心が沸きたった。夫の地図の緑の旗をたどって、とあるフレンチバルで変わり種のおはぎを買った。クリームチーズ酒粕の餡に金柑の砂糖漬けがのっているおはぎや、抹茶餡に干しわかめがのっているおはぎだ。夢の中の出来事のようだと思った。

 そこからさらにしばらく歩いていくと、見おぼえのある道にはいる。さいきん夫が気に入っている、東側の隣街のパン屋のある通りだ。ここもよく行列ができている店だが、15時すぎに到着した今日は列どころか客が1人もいない。店内に入って「お店まだやってますか?」と聞くと店員さんは「はい、チャパタしかありませんが……」と言う。本来ならショーケースに数十種類の惣菜パン菓子パン食事パンが並んでいるのに、それらはすっからかんで、チャパタだけがわずかにある。せっかく来たので「ではチャパタをふたつ」買った。きょうは暖かいからお客がいっそう増えて早めに売り切れてしまったのだろう。
 パン屋から家への帰り道、また「まだ歩いていない道」をたどっていたら、住宅街のとあるカフェに行列ができていた。店名を見て、ここのホットドッグがうまいという情報をTwitterで見たのを思いだした。うまいホットドッグを食べてみたくなり、列に並ぶことにする。自分たちの前に4組ほど並んでいたが、テイクアウト用のコーヒーカップを手に店を出ていく人も多く、サクサクと列は進み、5分ほどで注文カウンターに立てた。満を持して「ホットドッグと、」と言うと「ホットドッグ売り切れてしまいました」と言われ、ガーン。列がサクサク進んだのはこれが理由だったのかもしれない。じゃあいいですというのもアレなので、コーヒーふたつとタルトを2種(バナナ&チョコ、金柑&アールグレー)を注文し、テラス席でいただくことにした。
 テラス席には大きな桜の木がある。春にはこの桜目当てでさらにお客さんが並ぶのかもなあと枝を見上げながらコーヒーを飲む。タルトもおいしかった。するとほどなくして店員さんが近づいてきて「パンが届いてホットドッグが作れるようになったのですが、召し上がりますか?」と訊きにきてくれた。さっきホットドッグをあきらめた客ひと組ひと組をまわっているようだ。なんと細やかな対応。ぜひぜひとお願いした。10分ほど待って出てきたホットドッグは、パンもハーブソーセージも特別にうまく、なるほどこのために列もできようというものだ。


 帰り道、家にある食材と気分を言い合いながら献立を決める。1週間前に買った白菜がまだあるが鍋の気分でもない、など。スーパーで買い物をして帰宅。また少し録画消化をしているうちに18時になったのでBSで『鎌倉殿の13人』を見て、夕飯は白菜とベーコンの豆乳クリームシチューとチャパタを食べた。