千層のポテト
わたしの好きなコロッケをひとつ紹介しておきますと、鶯谷 食堂おぼろのコロッケですね。いつでもメニューにあるわけではないので(ひょっとするとじゃがいもの仕入れによるのかもしれない?)、出会ったら頼まないテはない。
— ひろこ (@hilocoffee) 2023年1月20日
どっしりとして衣は繊細、じゃがいもがうまい。 https://t.co/tYnCeYreTE
1/19(木)放送の『アメトーーク!』「やっぱり!コロッケ芸人」の中で芸人さんたちがおすすめのコロッケを出す店を紹介しており、その話にまざるように自分も好きなコロッケについてツイートした。すると今週の食堂おぼろでまさにコロッケが出ているよと教わる。ツイートにも書いたとおり店ではコロッケをいつでも出しているわけではない。コロッケ欲の高まっている今、おぼろにコロッケが登場しているのなら、これはもう行くほかない。
きょうはウォーキングアプリ『ピクミンブルーム』がコミュニティ・デイ(その日のうちに1万歩を超えると特別なバッジがもらえる)でもあるので、鶯谷の食堂おぼろを目指しながら1万歩をかせげるように、自宅から20分ほど歩いたところにある最寄りではない駅から電車に乗りつけ、食堂おぼろ最寄りのJR鶯谷駅でなく、その南側にある上野恩賜公園を南端の不忍池から歩き出せるよう東京メトロ湯島駅で降りた。湯島に来ると、「湯島通れば道理ひっこむ」というダジャレの仕組みをパタリロが解説していたのを思いだす。上野公園を1時間ほどウロウロしながら北上して食堂おぼろに着くころにはおなかペコペコ、という『ベスコングルメ』(5〜6kmひたすら歩いて腹をすかせたのちに好物を食べるTBSの番組)方式をとるのだ。テレビとゲームにモチベーションをあずけまくっている。
1万歩達成し、2023年1月のテーマフラワーである水仙の絵柄のバッジをもらった。今回もとてもかわいい。満足して食堂おぼろへ向かう。
17時ごろに店に入り、コートを脱ぎながら前菜四品盛り合わせと梅もろみ酢のお湯割りを注文。

本日の前菜四品盛り合わせは、千層のポテト、菊芋きんぴら、里芋煮、ピクルス、豆腐田楽の五品。
五品のうち千層のポテトは、店主が言うには海外のレシピサイトで見かけた”Thousand Layer Potatoes”という料理を試したのだそう。その工程は「じゃがいもの薄切りに鶏の油を和えて重ねて3時間焼いて9時間冷やしてカットして冷凍して、オーダーを受けてから揚げる」という、日ごろ時短料理をたよってばかりの自分には気の遠くなるものだった。そんな手間暇料理に、入店して数分後にはありつけてしまうのだ。飲食店はたのもしい。
塩がぱらりと振られたそれをかじると、外側の切り口のところは揚げたての層のパリパリサクサク、中央は熱したじゃがいも特有のほっくりねっちり。肉の旨みも含んだポテトの香ばしさ。「くっ……おいしい……」声が漏れでる。手間暇の意味がよくわかるおいしさであった。
店主は「メニュー名ははじめ”ミルフィーユ”ポテトにしようと思ってたが、ケーキのミルフィーユともイメージが違うので直訳で”千層の”ポテトにした」と話していた。「千層のポテト」はとてもいい名前だと思う。『千のナイフ』や『1000のバイオリン』に通じる、不朽の名作の響きがある。
千層のポテト以外もしみじみとおいしい。菊芋きんぴらのシャキシャキが大変好みだった。この店の料理は、味のおいしさもさることながら食感の楽しさがよく考えられてるなと思える料理が多い。
そして本日の目当てのコロッケ。2杯めはじゃがいも焼酎「清里〈樽〉」のお湯割にした。いま書いていて気づいたが、千層のポテトへの感動にはじまり待望のコロッケをじゃがいも焼酎で迎えるなど、無意識に1人じゃがいも祭りを開催していた。

これです、コロッケ大好き芸人のみなさん。食堂おぼろのコロッケは衣が繊細で身がどっしりと大きい。それだけでごちそうになる、品のよさ気前のよさがあるのです。



3杯めにホットレモネード。牛の赤ワイン煮(ほろほろ)、山芋磯辺焼き(もっかい焼酎にもどろうか迷うおいしさ)といただき、歩いてきたおかげか腹が「先生、自分まだやれます!」という感じだったのでキーマカレー(からくてうまい。手足や耳まで温まる)も食べて満足。ホットコーヒーでシメた。この、和洋あれこれ堪能したあとにホットコーヒーが飲めるのも最高なんだよな。
コロッケ、赤ワイン煮、カレーを家にいる夫用にテイクアウトして本年初おぼろを終える。
ところで食堂おぼろは常時TBSラジオが流れているのだが、自分は土曜の夕方すぎのTBSラジオにどんな番組があるかを知らないので、聞こえてくる声と話の内容からしだいに出演者や番組の趣旨がわかってくるのも楽しんでいる。きょうはホットレモネードを頼んだあたりで「ここでお知らせです。わたくし○○(聞き取れない)はこのたび、なんとクイズ番組で賞金1000万円を獲得しました」と聞こえてきて、思わず「ええ?」と声が出てしまい、その声に振りむいた店主と他のお客さんに驚いた理由を報告するハメになった。すごいけど、どういうお知らせ? 近況をお知らせ風に言うギャグ?
調べたところ『こちらQuizKnock放送部』という番組であるらしい。気になって帰宅してからその番組の”お知らせ”の部分をradikoで聞きなおすと、QuizKnockの人が獲得した賞金1000万円をつかって全国の学校のクイズ研究会に早押しボタンをプレゼントする企画の説明をしていた。なんと。クイズ界の教育投資ではないか。賞金の使い途にまで賢さがうかがえて感心する。
”気圧のせい”にはとても助けられている
土曜日。夫が朝食に昆布バターポトフをつくってくれた。料理家の長谷川あかりさんがTwitterで紹介していたレシピだ。
長谷川さんはいつもシンプルな材料・少ない手数・やさしい味でしっかり野菜が食べられるレシピを提案しているのでつい真似したくなる。今回のポトフもおいしく、1度の朝食で1/4カットの白菜を2人でぺろりと食べきった。
白菜はいま非常に安い。駅前のスーパーでは1/4カットも1/2カットも同じ99円で売られていたほどだ。白菜が安いうちはなるべく買って、この昆布パターポトフも頻繁につくろうと夫に言う。
友人Sがわたしの住んでる駅に別の用があって来ているというので昼に会った。彼女は最近、漫画『美味しんぼ』を語る同人誌を出しており、それをわたしは先日の文学フリマ東京で1冊買った。わたし自身は『美味しんぼ』をよく知らないのだが、文フリ帰りに会う予定の友人Nさんが美味しんぼ好きであるため、Nさんへのおみやげとして買ったのだ。そしたら同行していた夫がその『美味しんぼ』語り本に興味を持ち、Nさんに会うまでの道中で熱心に読んでいた。夫も『美味しんぼ』が特に好きというわけでもないのに。そして『美味しんぼ』本をNさんに渡したあとの帰り道に夫が「あの『美味しんぼ』本はかなり良い」と絶賛しだしたので、Sに「夫がとても気に入っていたので、また機会があればもう1冊買わせてほしい」と連絡したところ、Sがその機会をすぐにつくってくれたのだった。Sと少しお茶をして、彼女が同人誌を作りつづける理由などを興味深く聞く。

Sと別れて帰宅すると、異様な眠気に襲われた。気圧によるものかもしれないと早々に結論づけて、それならば無理して起きていても仕方がない、2時間後には習いごとのためにまた家を出ないといけないが、布団に入ってきちんと寝ることにした。年をとるほどに”気圧のせい”という考え方にはとても助けられている。
眠りの導入時の記憶がなく、次に目を開けるともう出る時間。べそをかきながら出かけるしたくをする。夫が「落ちついて行きなよ」と言っている。自転車で向かうので、あわてて事故を起こさないようにという意味だろう。気を引き締め、言われたとおりスピードを出さずいつも以上に念入りに確認しながら自転車をこいでいたら、信号運もよく、見積もっていたよりも早く着いた。
習いごとのフラワーレッスンでは、ちょっと前衛的な枝ものづかいを先生に提案され、それを試してみる。持て余した花材を最後テキトーに挿したところを先生に「これはどういう意図で?」と指摘されたので、持て余したので無計画に挿しましたと正直に言い、先生にアイデアをもらった。言われたとおりにやってみるとたしかに良くなったので先生もうれしそうだった。
フラワースクールの近くにある気に入りのコーヒー店でコーヒー豆を1kg買い、パン屋で今夜と明日のぶんも見こんでパンやサンドイッチをどさどさ買って帰路。夫に、家にあるものでスープをつくって買ってきたパンとで夕飯にしようと提案する。夫は昆布バターポトフをつくってくれた。
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▼友人Sの『美味しんぼ』語り本は文フリを終えて通販も開始したとのこと。
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総括などはせず
在宅勤務。18時で切り上げる。2週間ぐずぐずしていた案件をやっと完了させたので少しだけ気持ちが軽い。
鶯谷の食堂おぼろへ。前の勤め先で知り合った友人2人と”忘年会”。彼女たちと私の3人はどういうわけか「11月に忘年会をやる」ということにオモシロを感じており、今年も11月になると「忘年会の季節ですね(うくく)」となって、集まった。忘年会といえどもべつに1年の総括などはせず、店の料理を味わい、わたしは最近さくらももこ展に行ったことを、TさんとKさんは冨樫義博展に行ったことを報告しあった。
TさんとKさんは今も同じ会社に勤めていて、今その会社はなんと全社的に出社することになってるのらしい。その会社はコロナ禍前からリモートワーク推奨していたうえにコロナ禍でそれが徹底されオフィスをかなり縮小していたのだが、そこにきて全社的な出社令。出社したところで執務スペースに座る場所がなく、あぶれた人たちは食堂で仕事しているそうだ。会議室も奪い合いで、結局みんな自席から(食堂から)Web会議に参加しているという。そんなギャグみたいなこと、あんなにスマートだった会社が?と信じられなかった。Twitterを買収したイーロン・マスクがTwitterの社員に週40時間以上の出社を命じたニュースを少し前に聞いて(彼の他の施策とあわせて)理不尽に思っていたが、経営者としてはやっぱりひとところに集まって仕事してもらいたいものなのだろうか。
自家製ハックルベリーシロップのソーダ割、前菜四品盛り合わせ(白滝のたらこ和え、ヤーコンぽん酢、かぼちゃ煮、万願寺じゃこ、ローストポーク。「四品」の名で五品)、赤ワイン、洋梨ベーコン、ピーマン春巻、コロッケ、ジャグリーギネスクリームソーダ、干し柿とカマンベール、唐揚げをいただく。食堂おぼろのコロッケは色っぽい。

“忘年会”なのに、別れるときも誰も「よいお年を」とは言わなかった。Tさんは「まもなく実家から柚子が大量に送られてくるから、届いたらおすそわけさせてくれ」と言っていたのでたぶん年内にまた会うのだろう。