千層のポテト


 1/19(木)放送の『アメトーーク!』「やっぱり!コロッケ芸人」の中で芸人さんたちがおすすめのコロッケを出す店を紹介しており、その話にまざるように自分も好きなコロッケについてツイートした。すると今週の食堂おぼろでまさにコロッケが出ているよと教わる。ツイートにも書いたとおり店ではコロッケをいつでも出しているわけではない。コロッケ欲の高まっている今、おぼろにコロッケが登場しているのなら、これはもう行くほかない。

 きょうはウォーキングアプリ『ピクミンブルーム』がコミュニティ・デイ(その日のうちに1万歩を超えると特別なバッジがもらえる)でもあるので、鶯谷の食堂おぼろを目指しながら1万歩をかせげるように、自宅から20分ほど歩いたところにある最寄りではない駅から電車に乗りつけ、食堂おぼろ最寄りのJR鶯谷駅でなく、その南側にある上野恩賜公園を南端の不忍池から歩き出せるよう東京メトロ湯島駅で降りた。湯島に来ると、「湯島通れば道理ひっこむ」というダジャレの仕組みをパタリロが解説していたのを思いだす。上野公園を1時間ほどウロウロしながら北上して食堂おぼろに着くころにはおなかペコペコ、という『ベスコングルメ』(5〜6kmひたすら歩いて腹をすかせたのちに好物を食べるTBSの番組)方式をとるのだ。テレビとゲームにモチベーションをあずけまくっている。

 1万歩達成し、2023年1月のテーマフラワーである水仙の絵柄のバッジをもらった。今回もとてもかわいい。満足して食堂おぼろへ向かう。
 17時ごろに店に入り、コートを脱ぎながら前菜四品盛り合わせと梅もろみ酢のお湯割りを注文。

五品もある!でおなじみ、食堂おぼろの前菜四品盛り合わせ

 本日の前菜四品盛り合わせは、千層のポテト、菊芋きんぴら、里芋煮、ピクルス、豆腐田楽の五品。
 五品のうち千層のポテトは、店主が言うには海外のレシピサイトで見かけた”Thousand Layer Potatoes”という料理を試したのだそう。その工程は「じゃがいもの薄切りに鶏の油を和えて重ねて3時間焼いて9時間冷やしてカットして冷凍して、オーダーを受けてから揚げる」という、日ごろ時短料理をたよってばかりの自分には気の遠くなるものだった。そんな手間暇料理に、入店して数分後にはありつけてしまうのだ。飲食店はたのもしい。
 塩がぱらりと振られたそれをかじると、外側の切り口のところは揚げたての層のパリパリサクサク、中央は熱したじゃがいも特有のほっくりねっちり。肉の旨みも含んだポテトの香ばしさ。「くっ……おいしい……」声が漏れでる。手間暇の意味がよくわかるおいしさであった。
 店主は「メニュー名ははじめ”ミルフィーユ”ポテトにしようと思ってたが、ケーキのミルフィーユともイメージが違うので直訳で”千層の”ポテトにした」と話していた。「千層のポテト」はとてもいい名前だと思う。『千のナイフ』や『1000のバイオリン』に通じる、不朽の名作の響きがある。
 千層のポテト以外もしみじみとおいしい。菊芋きんぴらのシャキシャキが大変好みだった。この店の料理は、味のおいしさもさることながら食感の楽しさがよく考えられてるなと思える料理が多い。

 そして本日の目当てのコロッケ。2杯めはじゃがいも焼酎清里〈樽〉」のお湯割にした。いま書いていて気づいたが、千層のポテトへの感動にはじまり待望のコロッケをじゃがいも焼酎で迎えるなど、無意識に1人じゃがいも祭りを開催していた。

薄衣でどっしりしたコロッケ

 これです、コロッケ大好き芸人のみなさん。食堂おぼろのコロッケは衣が繊細で身がどっしりと大きい。それだけでごちそうになる、品のよさ気前のよさがあるのです。

牛の赤ワイン煮
山芋磯辺焼き
キーマカレー

 3杯めにホットレモネード。牛の赤ワイン煮(ほろほろ)、山芋磯辺焼き(もっかい焼酎にもどろうか迷うおいしさ)といただき、歩いてきたおかげか腹が「先生、自分まだやれます!」という感じだったのでキーマカレー(からくてうまい。手足や耳まで温まる)も食べて満足。ホットコーヒーでシメた。この、和洋あれこれ堪能したあとにホットコーヒーが飲めるのも最高なんだよな。
 コロッケ、赤ワイン煮、カレーを家にいる夫用にテイクアウトして本年初おぼろを終える。

 ところで食堂おぼろは常時TBSラジオが流れているのだが、自分は土曜の夕方すぎのTBSラジオにどんな番組があるかを知らないので、聞こえてくる声と話の内容からしだいに出演者や番組の趣旨がわかってくるのも楽しんでいる。きょうはホットレモネードを頼んだあたりで「ここでお知らせです。わたくし○○(聞き取れない)はこのたび、なんとクイズ番組で賞金1000万円を獲得しました」と聞こえてきて、思わず「ええ?」と声が出てしまい、その声に振りむいた店主と他のお客さんに驚いた理由を報告するハメになった。すごいけど、どういうお知らせ? 近況をお知らせ風に言うギャグ?
 調べたところ『こちらQuizKnock放送部』という番組であるらしい。気になって帰宅してからその番組の”お知らせ”の部分をradikoで聞きなおすと、QuizKnockの人が獲得した賞金1000万円をつかって全国の学校のクイズ研究会に早押しボタンをプレゼントする企画の説明をしていた。なんと。クイズ界の教育投資ではないか。賞金の使い途にまで賢さがうかがえて感心する。