伊集院光 日曜日の秘密基地

オープニングトークでは、プロ野球の話題でまたもや憤ってた伊集院さん。
テレビ局のオールスター戦放送がおちゃらけていて萎えるとか、例のライブドアの件がダメになったら野球好きの夢話のネタがひとつなくなってしまうとか。
子どもの頃は、そして今でも飲み屋の席では「もし自分が大金持ちになったらどこのチームのオーナーになるか」という夢の話で何時間でも楽しめたのに、今ここにきて"渡辺オーナーに気に入られなきゃ何もできない"ということになれば、もう「もしも」話をすることすらできなくて酒のつまみがひとつ減っちゃうよ、と寂しそうに言っていた。 竹内アナが「渡辺オーナーとお友だちになればいいんじゃないですか?」と言っても伊集院さんは「ダメだよ、俺、あの人と友だちになったらきっとファミレスで殴っちゃうかもしれないもん」だって(笑)。想像が具体的過ぎるよ。ナベツネはファミレスに行かないだろうに。
すると竹内アナが「じゃあこの番組に渡辺オーナーをお呼びして、お話を聞いてみたら"渡辺オーナーに知られている"ということになりませんか」と提案。これには伊集院さんも「そうか!いつもマスコミ越しでしか渡辺オーナーの話を聞かないから、俺も誤解してるところがあるかもしれない。本人と直接話してみたら結構わかりあえるかも」とにわかに元気になっちゃって、かわいいな。 竹内アナも伊集院さんのネガティブトークを適当に流さないで話題を広げようとしていてやさしいね。
「よーし、渡辺オーナーと仲良くなったら、あとは500億円貯めるだけだー!」って伊集院さん張り切ってた(笑)。



『VIPルーム』ゲストは橋爪功さん。
すーごい面白い人だった。口調も発想も若くて、伊集院さんとは近い年齢の先輩後輩ぐらいの雰囲気。草野球もするぐらい野球好きだそうで「俺はパシフィック派」と宣言すると、ここでまた伊集院さんがさっきのプロ野球への憤りを引っ張ってきてしばし盛り上がっていた。飲み屋状態。


橋爪さんはプライベートではいつもジャージしか来てなくて、寝るときも出かけるときもジャージなんだって。
いつもドラマではちゃんとスーツを着ている印象があるから意外だ、と伊集院さんが言うと橋爪さんは「スーツなんて着るわけないじゃーん。4月から10月までは雪駄で過ごしてるよ。だいたい俺、アブラ足*1なんだよねー。だから革靴が苦手なのよ。木登りはうまいけどね」って、言わなくていいよそんなことまで(笑)。


ドラマや映画ではいい人の役しかまわってこなくて不満、とうい話も。「もっと悪いことしてぇよー」(橋爪)。芝居上で、ですよね?
でも確かに橋爪さんって"いいお父さん"か"いい上司"ってイメージができあがってて、殺したり殺されたりっていうバイオレンスな演技は見たことない。イメージすらできないよ。普通のおじさんの象徴みたいなものだものね。 「今なら俺、お買い得だから。誰か監督、お話ちょうだい」と悪役の仕事募集をする橋爪さん。


他人の芝居はできる限り観ないんだそうだ。理由は「面白くても面白くなくても腹が立つから」。正直だ。でもヘタに寛大なふうなことを言うよりもずっと格好いい。
では「自分の芝居を同業者が観てるとわかっても平気ですか?」(伊集院)との質問には「それは大丈夫。だって誰が観てたって舞台に影響を与えるわけじゃなし」(橋爪)と。 でも若い頃は先輩に観られてるのはやはり苦痛だったし、別にダメ出しされるわけでもないのに「きっとすべて見抜かれてるんじゃないか」と思い込んでしまってやりづらかった、という話に。「今はそんなことないけどね。そもそも年齢的に先輩たちは死んじゃってるし」(橋爪)。だから一言多いんですってば。


今はあるていど物事が見えてきているから「脚光浴びなくても死なねぇや」と余裕も持ってるけど、若い頃は名無しの役を永遠に続けるのではないか、ここから抜け出せないのではないかと悩んだとも。「今思えば単純に上がつっかえていただけなんだけどね。上の人たちもなかなかどこうとしないから」って。
今の自分が20代の自分に言葉をかけるなら「10年待てば大丈夫」と言ってやりたいそうだ。


自分の出演作品はあとから見返すことはあるか、というとそれも苦手らしい。
これを伊集院さんは非常に喜んでいて、なぜなら伊集院さんの周りのタレント(さんまさんとかくりぃむ有田さんとか)はみんな"自分ファン"な人ばっかりで、自分の出演番組を見返しては「俺っておもしろい」とよく言ってるのを聞くから、自分の出演番組が見られない俺は自意識過剰で変なんじゃないかと悩んでいたとか。 いや、むしろ彼らの自分スキーが過ぎるだけだから心配無用ですよ。



以前、橋爪さんが雑誌の取材で奥さんとのなれそめを訊かれたときに、冗談で「道を歩いてたら(妻が)ついてきた」と答えたら、その言葉を「(笑)」もつけずに載せられてしまったので大変なことになったという話も。 奥さんにも怒られたし、奥さんの両親とも険悪になっちゃったんだって。今も何かあるたびに「どうせ私は勝手についてきただけですから」とイヤミに使われちゃうんだとか。
「取材を盛り上げるために言ったその場の冗談を、その場のニュアンスも含めずに文字に残されちゃたまらない」「これで幾人の信頼を失ったことか」とペンによる被害をいろいろとこぼしていた。活字になった自分の発言を読むと、いかに自分の言葉が伝わっていなかったか、空気が共有できていなかったかがわかってがっかりする、など。
しかし奥さんからは「あなたは誤解を招きやすいから気をつけなさい」と口すっぱく言われてるんだそうだ。 たしかにこうして番組上のトークをちょこっと聞いてるだけでも、このギリギリなことまで言っちゃうサービス精神を「面白い」と取るか「ヒドイ」ととるか、受け手によっちゃ分かれるだろうなと思った。
で、最終的に「まぁ人生、修行ですよ」とよくわからないまとめをする橋爪さん。


橋爪さんも伊集院さんも共通して「自分の奥さんが一番視聴者として参考になる」らしい。 知り合いや同業者、芝居や笑いに詳しい人の意見だと、お世辞を言われたり細かいことまで分析されたりして素直に受け入れられないこともあるけど、奥さんなら一般視聴者として直感的に反応してくれるからありがたい、と。「普通の人を笑わせたときの快感はたまらないですよね」(伊集院)。
うーむ、そういうもんなんだ。それじゃあ私なんて表現者の妻に向いてないよ(笑)。知ったふりしていろいろ言っちゃいそうだもん(たしかにうざったいかも)。 自分の興味が及ばない分野の人となら大丈夫なんだろうか? しかしとりあえず芸人さんとの結婚は諦めなければなるまいな、ってゼロの可能性に何を諦めるか。



まぁそんなこんなで、実際はもっといろんな話題がたくさん出てきていたし、それこそ「文章化」したことによってトークの盛り上がりはほとんど伝えられないのだけど、飲み屋にいるおっちゃんたちの話みたいで面白かったなー。あまりにあちこち話題が飛ぶから、うまくまとめられなかったや。
バカバカしい話が急に深くなって、でもその深さにしんみりしていたらまたバカバカしい話に展開していくような、ナスの浅漬けでも噛みながら議題のない話をダラダラしている感じ。"意気投合"ってこういうことかー、と笑いながらも妙に嬉しかった。

7/16(金)〜7/25(日)まで紀伊国屋ホールでおこなわれるらしい。
橋爪さんは「テレビではできない悪いこと、いっぱいやってます。犯しまくったり殺しまくったり」とイキイキと紹介していた。
円の芝居は難しそうな印象があるけど、ダーク橋爪さんのことをもっと知りたいし(笑)、観にいってみようかなぁ。

*1:汗っかきな足、ってことだろうか