駅ビル内の新星堂前を通ったら、店頭モニターにカンニングが。
何かと思ったらJanne Da ArcARCADIA』のテレビCMがエンドレスに流れていたという。
「こんなもん売れんわーっ」とお約束の叫びをかましつつも、しっかり華やかなアロハシャツをまとっていた。


そんなカンニングに誘われて店内に入る。最近、CDもDVDもほとんどAmazonで購入していたから、レコード店に入るのは本当に久しぶりだった。思わぬところでカンニング効果。


ふと見ると店頭にはセールワゴンが置いてあり、発売から時間が経ったCDを1枚10%off、複数枚買うと20%offという条件の下に並べていた。


で、その中から今回購入したのはこちらの2枚。


小田和正はともかくとして、私がヒップホップのCDを手にすることがこの地味な人生においてどれだけの冒険であるか。知ったことではない。


日記上部には「好きなものは多いほうが、人生は得だ。」なんて悟ったような言葉を掲げている私だけれど、病的に食わず嫌いが多い、というのが本当のところ。
世の中が盛り上がってるものに対して素直に賛同できないという、モテない人間のモテない所以たる屈折した性格や、「私がいなてくも彼らなら大丈夫」というような"お前何様"的思いあがりなどが手伝って、ヒットランキング上位の作品には出来る限り興味を向けないようにしてきた今までの人生。
それに加えてヒップホップに関しては、その音楽性云々への好みよりも、それらのアーティストたち自身に「言動が少々暴力的なお兄ちゃん」の印象があって、正直に言えば、どこの家庭の母親もこぼすような「あそこのウチの子とあんまり遊ばないでほしいわ」的感情を抱いていたという。あ、この場合、母親となるは己のマインドBである。マインドBの発言力はわりに大きい。


しかし私ももう22歳。
月曜から金曜まで、朝はまるで赤福餅のように通勤電車に詰められ、電車の揺れによっては知らない年配男性の胸に強く顔をうずめることもあり、なんとか本日も生きて電車を降りられたと喜びながら汗だくで会社に行けば席は冷房の目の前。瞬時に冷えていく汗、冬のジャケットを羽織り、冷たい指先でたどたどしくキーを叩いては使い物にならないソースコードを書き上げて上司先輩らを困らせる、などといった毎日をくり返し、その報酬として、少ないながらも給料というものをもらっている身分なのである。
だからもう私、母さんの言いなりにはならないわ。



閑話休題、ヒップホップに対する様々な葛藤が己の胸の内で繰り広げられつつも、しかし一方で本当は素直になりたい自分は、気付けばそれら楽曲の一節を鼻歌ってることがしばしばある。 そんな私の鼻歌ランキング・ヒップホップ部門でこの2年間ずっと1位を守り続けてきたのが、この『TOKYO CLASSIC』にも収録されている『楽園ベイベー』なのだ。 相変わらず本題までの道のりが長い。


なにしろこの分野に関しては初心者であることだし、深入りする体力も持ち合わせていないので、詞や曲の分析などはしないでおく。
ただ、聴き込んでもいない人間の脳内で2年もかかり続け、挙句に何かの拍子で購入させてしまうというこの曲の、色褪せない気持ちの良さのパワー。それは本能の中まで潜り込んで私を呼びに来る。


CD1枚の購入に「運命だ」は大げさだし、「ご縁が」と書けば年寄りくさい。だけどつまりそういうことなどを感じたのでありまして、そう、素直にいえば「こういうのも好き」なの私。お母さん。