毎朝、脱出ゲームをやっていたのかもしれない

貴重な晴れ間。
洗濯機のスタートボタンを押すと、いつものようにピーピーピーとアラート音が鳴る。ドラム式洗濯機のドアロックの部品が不調で、しっかりロックできていないとのアラートを出しているのだ。
この場合、いつもはドアを何度か開け閉めしたり、ドアロックの可動部品を棒でつついて動きをなめらかにしてからもう一度しめると、うまくいく。今日もそのつもりで、いつもの棒(園芸用の支柱。部品をつつくのにちょうどいい細さ短さなので、洗濯機の横に備えている)で部品をつついていたら、ぱーんと部品が割れ散った。もうドアをロックできない。
夫にも見てもらう。夫も同様に開けたり閉めたり部品をつついたりしていたが、もうロックされないよ、部品が割れたんだからと背中から声をかけるなどして「買い替えようか」の言葉を引きだす。よしよし。家電の買い替えの同意を得るには、相手にも不便さ、やりようのなさを体験してもらうのが一番だ。

2017年の海の日に買ったドラム式洗濯機。ベランダに外置きして、特にカバーなどもかけていなかった。
きょう壊れたのはドアロック部分だが、じつは操作ボタンも、外置きがゆえに風雨や紫外線の影響でぼろぼろになっていた。ボタンの文字やランプ表示もかすれて見えなくなっており、いつしか自分にはボタン操作音の音階を聞き分けて洗いのコースを選ぶスキルが身についていた。
コース選択ボタンを押すたびに音階がド・レ・ミ・ファ・ソと上がっていく。標準コースのつぎによく使うドライコースは、標準からボタンを7回押してシの音の位置にある。ただしその音階すらも、この1ヶ月ほどは狂ってきていて、どういう仕組みか、ミの音(おいそぎコース)が半音低い感じになってきていた。そうすると次のファの音(柔らかコース)との音階差に動揺してしまい、いま何番目の音なのかわからなくなって、ふりだしの標準コースに戻り、今度は音階に惑わされないよう数えながら押すことになる。
コースでなく、すすぎからとか脱水だけとかをおこないたい場合は、文字の消えたいくつかのボタンを、洗濯機の説明書の図面でボタン配置を確認し、これまた操作音を数えながら押す。
こうして書いてみると、わたしは毎朝、脱出ゲームをやっていたのかもしれない。

美容院の予約時間が迫り、ひとまず夫にはコインランドリーできょう洗うはずだった大量の洗濯物を洗ってきてほしいと頼んで家を出る。
美容院、きょうはカットだけ。さいきんはカットとカラーを別日に分けている。髪を切り終えて、次回のカラーの予約をして店を出る。

夫と合流して、新宿のヨドバシカメラへ。
ヨドバシに行くまでは「次はメーカーを変えよう」と決めていたが、店員さんと話していて、けっきょく今つかってるものの後継機ならおぼえることが少ないし、新機能のさらなる便利さだけを享受できるように思えてきたので、また同じメーカーにした。新しい洗濯機はあす届けてくれるという。ありがたい。
我が家は外置きである旨を話すと、メーカー販売員の方は「洗濯機は基本的に外置き用に作ってない」と言ったうえで、ドラム式洗濯機に洗濯機カバーはないので(ネット検索で出てくるドラム式洗濯機カバーはどれも海外製で、日本のドラム式規格には奥行きが足りないそう)ホームセンターで防水シートを買ってきて、強力な磁石で留めるなどして風雨をしのぐだけでもましだろうと助言してくれた。けさ壊れた洗濯機も、外置きのわりによく7年ももちましたねと驚かれる。

支払いと手続きを済ませ、夫はそのまま、恐竜に関するトークイベントへ出かけた。
わたしは地元駅に戻り、地元駅の無印良品で取り寄せ注文をしていた竹材のラックを受け取った。本屋にも寄り、大河ドラマ『光る君へ』ガイドブック後編を買って帰宅。わたしが美容院にいっているあいだ、夫はコインランドリーから回収した洗濯乾燥済みの洗濯物をぜんぶたたんでしまってくれていたようである。やらなきゃと思っていた家事がひと山ぶん片づいていてありがたい。
家の冷蔵庫に残っているサラダとメンチカツを食べて昼寝。起きて、無印の竹材ラックを組み立てていると夫帰宅。

一息ついて、メーカー販売員さんの助言にしたがい、洗濯機のカバーにするシートを買いに2人で隣町にあるホームセンターへ歩いて向かう。
6月初日、晴れて、空気はひんやりとしており、歩きまわるのにちょうどいい。洗濯物を家で洗って干したい天気だなあと思う。
ホームセンターで1時間ほどさまざまな資材や商品を物色し、銀色のハトメ穴つき防水UVカットシート1.8m角と強力マグネットフックを買う。ついでに日本朝顔の苗も4色買った。
ホームセンターを出て、その近くの初めて入る料理屋で生ビールを飲む。エノキの天ぷらと、焼きしゃぶが絶品だった。
帰宅し、布団に寝っころがって『光る君へ』ガイドブック後編をめくりはじめたあとは記憶がない。