「読んでみたい」というつぶやきを見つけてくださった方が貸してくださいました。いつも本当にありがとうございます。
- 作者: 吉野朔実
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2001/06
- メディア: 単行本
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「私はこんなふうにはなりたくない」と叫びつつ、でも、じゃあ、自分は未来に対してなんらかの目的を持っているのか、努力しているのかといえば、何もしていない。実家暮らしで生活には困らないから、手元にあるお金はほとんど趣味につぎ込んで、それで趣味に生きている自分を高尚だと思おうとしている。
でも母も姉も、他の人もみんな、やるべきことをちゃんとやって、大切なものを大切にしてきている人なんだと気付きはじめたら今度は、ぬくぬくと不安なく暮らしている自分が恥ずかしくなってきて、毎日母親と一緒にご飯食べてることがむずがゆくなってきて・・・。
そういう瞳子ライフで溜まった“漫然とした居心地の良さ”に対する居心地の悪さが破裂して、ひとり暮らしを始めたといっても過言ではないです、私。
ある晩の母親との食卓で私が母につまらない言いがかりをつけ、勝手に泣きわめいて、その後3日間は家で食事をせず、母親を無視し、3日ぶりに母親に話した言葉は「部屋、見つけてきたから」でした。母は「そんな簡単に決めることじゃない」とすぐには賛成しませんでしたが、父は「お、やっとだな」とあっさり賛成してくれました。たぶん私が毎日、母親と不毛な会話を繰り返しているのを目にして、こいつを早く家から出さなきゃいけないと思っていたんでしょう。
勢いで飛び出してきて、窓だらけの寒い部屋で、暖房をつけても湯を沸かしてもお金がかかることを知って起きているのがもったいなくて布団にもぐって、実家から片道30分という甘えた近さで、でもいざ親が入院しても何も役に立てなくて、本当に私は何を無駄なことやってるんだろう・・・と、ひとり暮らしを始めて5ヶ月になる今でもまだ気弱になることがよくあります。
でも家族を離れると、こんどは家族以外の人生の先輩たちが知恵を貸してくれるようになりました。「私を大切にしてくれる人がたくさんいてね、」と親に話すのが、今の私ができる親孝行だと思うことにしています。
瞳子の時間もそこを抜け出す転機も人生には必要だし、そこを過ごせた自分の人生は非常に贅沢なんだわ、と自画自賛している次第です。
そういうことを話したくなる作品でした。読んで良かった。ありがとうございます。