握手しました

涙が出てきた。
ひとりで泣いてて恥ずかしい。
こんなにうれしいと思わなかった。


整理番号順に書店の裏の関係者通路みたいなところに通されて、まだこの先べつの部屋に通されるのかなと思って少しずつ進んでいたら、急に自分の左側にウッチャンが座っていた。驚いて「あっ!」とウッチャンの顔見て叫んでしまった私。スタッフの方たちと見分けつかなかったよ。


それで慌てて右手を出したらウッチャンはそれを両手で包んでくれて「あら冷たいね、寒い中ありがとう」って。しっかり目も見てくれた。


まさかこんなにやさしく迎えられると思わなかったので、私はいろいろ考えてきた伝えたい言葉が出てこなくなって、とっさに「あの、映画完成おめでとうございます、楽しみにしてます」と早口で無難なことを言っただけだった。
そしたらウッチャンは「うん、ありがとうございます」って手を握ったまま、笑ってまだ目を見てくれていた。


ほんの10秒もないけど、すごくすごく長いようにも感じたし、やっぱり短かった。でもあれでじゅうぶんだ。
ウッチャンの手は温かくてふにふにとやわらかい“甘手”だった。