老人は家の守り神

日が落ちてもまだ熱い田町駅のホーム
世間はもう夏休み
乗り込んだ山手線は心なしか空(す)いていて、それがささやかな喜び
次の駅では人がどっと降りていくだろう
次の駅から人がどっと乗り込んでくる前に、座れるといいな

そして電車が止まる、どっと降りていく
流されないよう吊り革をつたって、運良く座ることができた
どっと乗り込む、ここは品川

なだれてくる人、人、人、の中に1人の女性
人を見た目で判断するなら、彼女の仕事はきっとウォータービジネス
この季節に厚手の豹柄スーツ  茶色が褪せた、重いソバージュ
職場はおそらく東京ではない

腕にも肩にも大きなバッグをひっかけて、車内全員へ聞かせるように携帯電話

「わかったから、大丈夫だから! また私をバカにして・・・
 ちゃんと乗ったってば、山手線。 駅の看板見たし、ヒトにも聞いたもん。
 ・・・・・・あーはいはい、もう切るよ! じゃあ東京駅でね!」

次は大崎

大丈夫、山手線は回るから。