最後のひと泣き

帰ると、玄関の前の蛍光灯に蝉がビシビシとアタックしていた。
近くで見ると蝉はなかなか恐ろしいビジュアルだ。
怯えながら私が部屋に入っていくと、蝉は、私が閉めた玄関のドアを居場所にしたらしい。
先ほどから、 じゅわわわ〜じゅわわわ〜じゅわじ〜 と夏の終わりの泣き声が狭い部屋に響いて離れていかない。
でも不思議とうるさく感じない。
風呂上がりにボーッと蝉の泣き声を聞いていたら、パジャマの上から蚊に刺された。
布の上から、ぶっすりと。
秋の蚊は真剣勝負だ。
痒いけど、苛立ちはしなかった。
でも蚊取り線香には火をつけた。