桃井かおり一人芝居

  • 8/14(土)19:00〜/原宿クエストホール

制作はイッセー尾形でおなじみの森田オフィス。チケットの一般発売はなく、ほぼシークレットでおこなわれたこのライブ。参加できて幸せだわ。 実は私、このライブ直前まである仕事をしていたのだけど、己の要領の悪さにて開演時間に間に合わず、1ネタ目を丸々見逃すこととなったのだった。うぅ、断腸の思い卍 しかし30分近く遅れていった惨めな私を制作の森田清子さん*1が「来てくださってありがとうございます」と笑顔で迎えてくださって感激。ネタを見逃したのは悔しいけど、清子さんのこの笑顔と言葉でずいぶんと救われた。 こちらこそありがとうございます。


そんなわけで2本目から鑑賞。
ステージには1本のスタンドマイク。舞台下手にトランペット奏者が1人、芝居中に唄うジャズの伴奏として。ステージ中央が演技スペースで背景はぼやけた鏡状の板、上手は着替えスペース。そう、生着替えあり。ドキドキしたよ。ちゃんと黒のキャミソール・ショートパンツ上下を着ていたけど。
ネタは全部で6本*2。顔を包帯に覆われ視覚を失った歌手、今朝がた刑務所から出所したばかりの歌手、不倫に嫌気がさしてリストカットを繰り返すアイドル女優、恐怖政治でバンド(劇団?)を統括しようとする女リーダー、歌手を目指してショーパブに立つ少女・・・。 演目を見ただけでもいかにヘビーだったかおわかりかと。現在52歳の桃井かおりが演じる10代の少女、一人芝居以外のどこで観る機会がありましょうぞ。
何よりも印象が強いのは、リストカット癖のあるアイドル女優。 皇居へ"私の弟妹"宛の手紙を持参したという某F谷美和子さんを彷彿とさせるような姿口調と気の違えっぷりが見事だった。 ヴィヴィッドな水色のワンピースに白い厚底ロングブーツ、左手首には赤く染まった包帯がだらんと垂れ下がっている格好。右手の包丁で左手の指を切りつけながらホワホワと甘ったれた口調で「マミはかわいそうぉ?」「奥さんと子どももかわいそうぉ?」「じゃあマミはかわいそうに見えるだけ?」。恐い〜(笑)!休みの日に"あなた"が家族といるのを見たと地団駄を踏むマミ、そのとき"あなた"はナポリタンを食べていた、でもナポリタンはマミといるときしか食べちゃいけない約束でしょう?と錯乱するマミ。 しかも時おり冷静になる瞬間がまたリアルで・・・。 「マミが死んだら、『喜びの歌』を唄ってね」と言い、第九のメロディに苦しみの胸の内を乗せて歌い上げるマミ。 こんな女優、本当にいるかもしれない・・・と、後半は観客も笑うに笑えなかった様子。
女リーダーも憑依的な芝居で恐かった。 リハーサルか何かの場で「私たちがアーティストとしてやっていくには」という説教。明らかに特定のメンバーをひいきする一方で、気に入らない子にはお茶淹れにまでダメ出し。「アケミちゃん、今お茶淹れるときじゃないよねぇ。私しゃべってんの。やめてくれる?そういう愛情の押し売り」。 非難された女の子を男のメンバーがかばうと「はい、今ここに性欲の需要と供給が成立しましたー」。  そこまで言うか(笑)!の厭味が次々と繰り出して、爽快感半分、嫌悪感半分という不思議な感覚で観ていたが、なるべくしてなったオチ、強がることしかできない弱い女の寂しさが暗転の闇に残る。


かおりさんは「あまり広く観られたくなくて、3日間だけこっそりとやりました」と照れくさそうにおっしゃっていたけど、観客の私としても、たしかに独り占めしたくなるような秘密感溢れるライブだった。
森田オフィスのお知らせでは「追加公演を予定している」とのことだったので(なので公演内容も詳細は控えたつもりです)、今回の雪辱を果たすという意味ではないけれど、絶対もう一度観に行きたい。
あ、追加公演に関する情報が上がってきてもこの日記には掲載しませんよ。興味を持たれた方は各自お調べください。だって独り占めしたいんだもん。

*1:演出家・森田雄三さんの奥様

*2:私が見逃したものも含め