ナナエがモトサヤ

ただいま。
いま、帰り道で寄ったブックオフで、なにげなく手に取った『フジ三太郎名場面 2 (朝日文庫)』のあいだに年賀状がはさまっててびっくりしたよ。売った人もお店の人も気がつかなかったんだろうか。
知らない人の年賀状なんて読んじゃいけないに決まってるけど、覗き見の気分で、本にはさんだままの年賀状をおそるおそる眺めてみた。

年賀状は1999年のもので、差出人は女性の名前、宛先は男性の名前だった。どうやらこの二人は学生。差出人住所と宛先の都道府県が違うので、大学の友だちが実家宛てに出したとか? で、この年賀状の差出人、仮にナナエと呼ぶけど、ナナエは字も絵も上手で、裏には疑いのない線でミッフィーちゃんが描かれている*1。そしてそのミッフィーちゃんの顔の横には2つのフキダシ。ひとつには

今年はもらう前に出してみたぞ!

うわーかわいい。女子だなぁ。ナナエはこの男子が好きで、あと一歩の恋に踏み出せないトモダチな間柄なんだろうな・・・・・・と思いきや、もうひとつのフキダシには

どうやらモトサヤになりそうです(もうなってる?) 詳しくは会ったときにでも・・・ハイ

え・・・・・・。ちょっと、ナナエ。そんなことヨシアキ*2に言っていいの? なにそれ。気を持たせておいて。ミッフィーなんかで女子ぶっておいて。よくわからない。


きっとアレだ、ナナエは前年11月頃に彼氏と別れて、その寂しさをこのヨシアキのやさしさでまぎらわしてたんだよ。季節は冬、人肌恋しくなるもんなー。 2人はクリスマスを他の友だちと一緒に飲んで過ごしたんだけど、あと少し勇気があれば、そうじゃなかったかもしれない。仲間とのバカ騒ぎの中で、ナナエとヨシアキは何度も目が合っていたから。
それでヨシアキもさ、「年明けにはナナエと一線越えるんだろうな」といろいろ膨らませつつ帰省したわけ。実家で雑煮食ってるより、寒くて狭いアパートでナナエと過ごしたかったな、とかね。
で、元旦。こたつで家族の年賀状を仕分けてたら、ナナエからかわいい年賀状が届いてる。ちゃんと俺が元旦に受け取れるように実家に出してくれてるんだ。うぉーナナエー俺も会いてーって興奮したヨシアキが手首ひねってハガキを裏っ返したらコレだよ。

モトサヤになりそうです(もうなってる?)

はは、残酷だね、女は。
一年の計が見事に打ち砕かれたヨシアキが手首と首をひねったまま数秒固まってると、母親が「あらーかわいい年賀状ね。カノジョ?」とかうっとおしいこと言ってきてさ。 でもヨシアキは「や、サークルの」って、それだけ。そして別に隠す必要もなかったけど、とっさにこたつのそばに転がっていた本へナナエの年賀状をはさんで、仕分けの作業に戻るヨシアキ。

その本が父親の愛読書『フジ三太郎』だった、という。

*1:そういえば99年は卯年ですね

*2:宛先の男子の仮名