蛇イチゴ [DVD]

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ずっと気になっていて、やっと観られた。各所で絶賛されているし、賞もたくさん獲ったそうでかなり期待してみたんだけど、やっぱり自宅の小さなテレビ画面で観たぐらいじゃそのすばらしさはすべて実感できないのかもなー、と、まず前置き。
面白かったけど、ダメ兄貴役の宮迫博之がソツなくかっこよすぎて、そこがちょっと私の理想とは違ったなぁ、と。「宮迫=ダメ兄貴」と知るキーが彼の家族のセリフ上にしかなくて、当の本人は、非常にスマートで頼りがいがあるんだよね。 たしかにやってることはダメなんだけど、兄貴自身が「俺ってダメだよな」とサラッと自分で認識してるあたりが私の期待したダメとは違う(笑)! それとも彼は、“悪いことをテキパキできる”という種類のダメということなんですかね。
それから、これを言及するのは野暮なことかもしれないけれど、家族の中で兄貴ひとりが関西なまりの標準語というのが、まっすぐな標準語の妹(つみきみほ)と会話することで違和感に。これも「違和感≒うさんくささ」という意味が含まれてるのかもしれないですけどね。
介護に疲れた母・大谷直子が良かったなぁ。 痴呆症老人の介護に疲れた主婦 という設定では『花いちもんめ。 [VHS]』の十朱幸代を思い出しましたが、あの作品の十朱幸代が徹底して“イイコチャン嫁”だったのが「リアルじゃないなー」と観た当時は感じました。ひたすら耐え忍ぶっていうのがね。まぁ古い映画だったら“耐え忍ぶ嫁と、理解をなさない姑たち”ってのはよくある構図だったのかもしれない。それに十朱幸代って、憎悪の演技とかがあんまり似合わない、アイドルみたいな女優ですよね。よく知らないけど。『花いちもんめ。 [VHS]』も面白いです、千秋実の痴呆演技が凄まじい。
あ、十朱幸代のことは別にいいんだったや。 それで、大谷直子が風呂掃除中に舅(笑福亭松之助)のうめき声を聞こえなかったふりするシーンがあって、そのときの 何かにとり憑かれたような風呂掃除が怖かったなぁ・・・。 それまで良き妻・良き母で通してきたのに、舅の死と家の借金の発覚をきっかけにパーンとはじけたようにヤケになるのもかっこよかったし。
そうだ、痴呆症のおじいちゃん役が松之助師匠だったんだから、他の家族もみんな関西の役者を使えば なまりの違和感は出なかったんじゃないか?いや、でもつみきみほ演じる“嘘をついたことがない妹”の生真面目さや融通の利かなさは、ガチガチの標準語だからこそよかったとも思えるし・・・。キャスティングって難しいスね。
でもこの映画の脚本&監督の女性って、当時20代後半だったわけでしょ?しかも初監督作品だそうで。それでこの完成度はすばらしいな*1。 なんかねー、その情報に勇気と焦燥感をいただきました。

*1:でも一方で、初監督作品にしては荒さがなくて揃うものが揃ってて美しくまとまりすぎだなーという物足りなさも。と、これはやっかみかも。