輪飾りの針金

  • 昼:牛すきうどん、納豆
  • おやつ:うさぎやのどら焼き、自家製あんこ(の味見)

 午前中だけ働いて仕事納め。部内では自分だけの出勤とはいえ、他の月と変わらず最終営業日としての仕事があふれていて納めきれず。年明けでもいいものはあふれたままにして他の部の人に挨拶して退勤。
 帰宅すると家主が床を水拭きしていた。ガス台の土鍋に火がついていて、わたしがコートを脱いでうがい手洗いを済ませると土鍋からうどんをよそってくれた。ゆうべのすき焼きの残りで煮たやつ。卵を落として食べる。うまい。風呂掃除、シンク磨きが終わったという。ていねいに掃除されて、家のあちこちが少しずつ明るくなっていく。
うどんを食べ終え、すぐにコートを着てまた外出。こんどは花の教室へ。子どもの頃、土曜日、学校から帰ってきて、母が出すごはんをかっこんで習い事にむかったのを思い出す。
 花の教室は臨時で迎春アレンジ講座。花の種類や処理のひとつひとつに先生が「この花は散らない、花もちがよく折れにくいから縁起が良い」「ワイヤーをひっぱりすぎて切れると縁起が悪いから慎重に」と縁起の良し悪しを言っていた。自分に用意された松や梅の枝ぶりが独特で、先生に相談しながら活ける。海老のような形になった。正月らしいといえばらしいかも。レッスンの最後におやつとしてうさぎやのどら焼きが出た。その場で食べずにかばんにしまう。
 自分が活けたアレンジのほかに、先生方(=お花屋さん)作の立派な水引リースも予約していたので受け取る。先生にはなんども「29日のきょう飾っちゃダメよ。正月飾りは28日か30日に飾るのよ」と念を押される。29日は二重苦、31日は一夜飾りといわれて縁起がよくないそうだ。二重苦って何と何の苦だろう。珈の香でコーヒー豆2種類を買って、えいえい自転車こいで家路。帰ると家主は雑誌『俳句』を読みながらあんこを炊いていた。その間にシンクの排水溝を漂白したという。
 活けた花を見せる。花に添えた水引も自分で輪をつくったのだ、と説明すると、家主は読んでいた『俳句』1月号のページを見せてきた。池田澄子さんの《輪飾りの針金ぐいと藁に隠す》という句があった。そう、まさにそれ。
 コーヒーをいれてもらい、炊いたばかりのあんこの味見と持ってかえってきたどら焼きを半分こしておやつ。あんこはまだ豆々しい。