ラッキーサーティワン

アロハシャツを着て出社。
午前のリモート会議の、終わりまで残り3分といったところで、話している同席者の声が聞こえなくなる。イヤホンのケーブルを抜いてみるとPCのスピーカーから音声が流れたので、イヤホンが壊れたようだ。数日前に右側のイヤホンから音が聞こえなくなり、左側だけでだましだまし使っていたのだが、ついに。
左右とも聞こえなくなったからには午後のリモート会議にむけて急いで次のイヤホンを調達せねばと焦るわけだが、ふしぎと解放された気持ちにもなる。左側よ、右側を追ってくれてありがとう。

正午になり、昼を買いにいくような軽装でオフィスを出て、人の波をかきわけ駅にはいり改札を定期券で抜けて電車に飛び乗った。数駅先の新宿駅につき、早足でヨドバシカメラのイヤホン売り場へ。以前買ったときの金額を思いながら同じくらいの値段のイヤホンマイクを選び取りレジへ。貯まっているヨドバシポイントで払う。すみやかに店を出て新宿駅から電車に乗りこみ、勤務先の最寄駅へ。12時50分。もうそれほど混んでいないコンビニに寄って、棚に残っていたおむすびをつかんでセルフレジで会計し、オフィスに戻る。12時55分。ロッカーに常備するインスタント味噌汁にお湯を入れ、席についておむすびをほおばり味噌汁で流し込む。13時、リモート会議に新しいイヤホンマイクで参加。成功だ。
イヤホンマイクなら今どきコンビニでも買えそうなものだが、定期券の区間内に新宿があり、なおかつヨドバシポイントが貯まっていたので、出費せずに新調できるし選択肢も豊富だからと昼休みヨドバシチャレンジを思い立ったのだった。1時間の昼休みに、電車と新宿駅とヨドバシカメラという巨大な時空間が入りこんできたのち再びオフィスに戻ったせいか、午後がすこし翌日に思える。

退勤。
地元駅のホームから改札につづく階段を降りていく人ごみの中に夫を見つける。近寄り、肩を叩いてわたしの存在を知らせ、改札を目指しながら「アイス食べよう」と誘った。「ラッキーサーティワンだね」と夫。我が家では、仕事帰りの電車が偶然同じだった場合、その偶然を祝ってサーティワンに行く習慣がある。別にその習慣のことをなんとも呼んでいなかったが、いま夫が"ラッキーサーティワン"と名付けた。

月曜日の18時すぎ、駅前のサーティワン店内には3人の待ち列ができていた。列のうしろに並びながら前方のアイスケースのラインナップを見て何を選ぶか考える。
迷うが、きょうのわたしはアロハシャツを着ていたので今がその時なのではないかとの使命感が湧きたち"ハワイアンクランチ"に決めた。チョコミント好きの夫は"スーパーチョコミント"に。普通のチョコミントもありながら"スーパー"を謳う、そのスーパーぶりを確かめるそうだ。
列が進み番が来ると、店員さんはスプーンにのせた季節限定のベリー系のアイスクリームをくれた。うまい。このサービスのひと匙で選択がゆらぐこともあるが、今回は毅然としてハワイアンクランチとスーパーチョコミントのダブルで、と告げる。サイズは迷い、メニューの"スモール"写真と"レギュラー"写真のあいだで指を止めて数秒悩んでいると、店員さんは客のその状況に慣れているのかすかさず「レギュラーは、けっこう大きいですよ」と情報をくれた。素直にスモールにし、会計を済ませ差し出されたスモールダブルのカップもまあまあ量があり、店員さんの助言に感謝する。
自分がアロハシャツを着ているからという理由で選んだハワイアンクランチは、すこぶるおいしかった。ココナッツミルクのアイスにパイナップル果肉とナッツのクランチが入っている。スーパーチョコミントのほうは、名前からしてミント感がパワーアップしているのではと覚悟したが、そういう感じでもなく、それよりもチョコがいろんな食感でたくさん入っているところにスーパーさを思った。夫はスーパーぶりには特に言及せず、ただうまいうまいと食べていた。

アイスクリームを食べ終え、惣菜がおいしいハム屋とスーパーマーケットで買い物をして帰宅。夫は料理をしつつ、わたしは洗濯物をとりこみたたみしまいつつ、おのおののタイミングでシャワーを済ませる。
夕飯。あさり・イカ・みょうが・レタスのレモン塩焼きそば、ハム屋で焼きたてを買ったチキンステーキ、およびゴーヤ&パプリカのフリット。夫はビール、わたしは芋焼酎ソーダ割り。もりもり食べる。何もかもがうまい。

夕飯を終えて洗濯機をまわす。近頃は早朝でも暑くてベランダに出るのが厳しいため、夜に干してしまうようになった。
洗濯が終わるまで、クリハラタカシ『今日の長女 今日の次女』をうくくくと読む。