2020/04/04

中止公演の払い戻しの中で、チケットよしもとのスマートさに感心した。クレカ決済で未発券なら、先方が一律クレカ決済取消処理をするので購入者は何もしなくて良いという(例外の公演もあるかも)。主催者とチケット販売者が同じだからできることなんだろう。

今日から原則外出しない生活が始まる。朝4時に起きて、中止公演のチケット払い戻し手続きを消化。その事務作業の流れで親に近況報告のはがきを書く。チューリップ畑の写真に"HOLAND"という文字が入った絵はがきを使った。小学生のころに連れられていった長崎ハウステンボスで買ってもらったものだ。

朝からTシャツ1枚ですごせるほどの陽気。自宅ベランダ前の桜がようやく満開になった。ベランダ前の桜は東京の標準の桜より毎年1週間ほど遅れて満開になるのだが、今年はあいだに雪をはさんだからか2週間遅れになった。2週間前の3連休、ずっと昔のことのようだ。きょうは朝昼晩の3食をベランダで食べるよ、と夫に告げる。

今の部屋に住み始めてからこの春で丸4年となる。古い3階建ての3階で、エレベーターはなく、間取りもへんで住むのに工夫がいる部屋だが(無用扉がある。棚でふさいでいる)、南向きのベランダがまあまあ広く、その目の前に大きな桜の木が1本ある(我が家と西側のお隣さんのベランダだけがこの桜に面していて、それ以外の部屋からは一部しか見えないと思われる)。建物の古さや間取りからくる不便さでたまに引っ越したい発作に見舞われるが、物件情報をあれこれ見ているうちに「でもここほど絶好の花見席のある物件、そうそう出会えないよな……」と思い至り、おとなしくブラウザを閉じる、までがセットになっている。

今の物件を内見したのは4年前の2月上旬だ。建物の古さや間取りのアンバランスさに「ここもナシか」と思いかけつつベランダに出たところ、目の前の大木の裸の枝先に赤みがあることに気づいて、この木はソメイヨシノではないか?と(当時は結婚前の)夫に話した。

中学校の国語の教科書にのっていた文章に「えもいわれぬ美しい桜色の着物があり、これは何で染めたのかと染色家にきくと、"花が咲く前の桜の皮で染めた"という。花びらのピンクは樹木全体でつくられた色なのだ」という内容があって、それを人生の折々で思いだすのだが、ベランダの手すりにむかってのびる、赤みをもった枝を見た時にもそれが浮かんだのだ。(いま調べたらその文章とは大岡信『言葉の力』という有名な文章だった)

自分は一本道でも迷子になるし電車も「これは行き先がちがうから乗ってはダメ」と指さし確認した車両のドアがあいたとたん無意識に乗ってしまうような人間で、知らない土地では完全に無能なのだが、2月の木を見てそれが桜だと気づき、それで住むと決められる勢いみたいなものにはわりと生きていくうえで助けられてるかもしれない。

朝食は花見パンケーキとしゃれこんだ。クリームチーズと、2月はじめの松本旅行で買ったレモンジャムをたっぷりのせる。春とともにそれらを堪能するつもりが、日差しが容赦なく、まぶしさを避けるために南に(桜に)背を向け、さっさと食事を終わらせた。

午前中に生花が届く。午後よりフラワースクールのオンライン授業があり、それに間に合うように花材を送ってくれたのだ。できるだけいつもどおりにするために、大変な労力をかけて下さったのだなあと恐縮する。さいきんことあるごとに恐縮してしまう。

授業はZoomというアプリを用いておこなわれた。スクールからメールでZoom会議室のリンクが送られてきて、それをクリックすると自動的にアプリインストールされ、すぐ会議室に案内される。会議に参加する時は適当なニックネームとメールアドレスを入力するだけで良い。自分であらかじめアプリインストールをしておいたりアカウントを作っておく必要がない。少し前からTwitterのタイムラインで「Zoomで会議した」「Zoom飲み会やった」と見かけていて、テレビ会議アプリなんて昔からいろいろあるのにどうしてみんなここに来てZoom、Zoom、Zoom、とマツダみたいになってるのかと不思議に思ってたが、この準備の要らなさ。これは広まるわけだ。

スクールと生徒お互いの不慣れにより、授業はいつもどおり受けられたとはいえないが、初めての今回に関していえば、教室のメンバーがつどって顔と花を見ながら会話できたということだけで充分だった。


昼食とも夕食ともつかない15時すぎにレトルトカレー。外が急に冷えてきたので、もうふつうに家の中で食べた。