ジャル!!シティ!!

 上演前後BGMは山下達郎。さわやか。

※コントタイトルはここに書くにあたってわたしがつけたものです。内容は導入部分のみでほぼ本筋ではありません。

引越し
青年(金子)は新しい部屋に引っ越してきた。手際よく荷物を運びいれる引越し作業員の2人(阿諏訪、後藤)。荷物が多いので手伝うべきかと尋ねる青年に、作業服の作業員たちは「こちらは3人だからすぐ終わる」と返答。3人……? ふと気づくともう1人、荷物を部屋に運び入れる男(福徳)がいた。軍服を着ている。帽子に耳あてがついている。空軍の人だ。だが他の作業員たちに聞くと新しくはいったバイトだといって意に介さない。
大道芸人
街。向かい風の中を行くようなポーズのまま微動だにしない男(福徳)。髪や服の動きもそう見える形で固められている。 通りがかる若者2人(阿諏訪、金子)。微動だにしない男と足元の投げ銭入れを見て、何が起こっても微動だにしないパフォーマンス中らしいと察する。微動だにしない男へちょっかいを始める2人。それでも男は微動だにしない。
再会
男子トイレ。個室に列。 青年(カネコ)、限界状態で飛び込むも列を譲ってはもらえない。しゃがみかたを工夫するなどして苦しみながら列を待つ青年。待ちに待って、やがて自分の番が来る。やっと開いた個室のドアから出てきたのはいつかの軍人だった。
最期の言葉
ある落語家(金子)を看取る弟子(後藤)。「生まれてから死ぬまでが落語だよ」と言って、師匠は息を引き取った。臨終を告げる医者(福徳)、泣き悲しむ弟子、駆けつける新聞記者(阿諏訪)。あすの一面に載せるんです、師匠の最期の言葉はなんでしたか? ……え? 生まれてから死ぬまでが? ……うーん、それは、ちょっと……弱いなあ。
美容院
美容師のゴトウに髪を切ってもらう青年(金子)。ゴトウさん、見ましたよアイドルの○○ちゃんのブログ。あの子の髪、ゴトウさんが担当されてるんですねーすごいなー芸能人も来るお店だったなんて。 すると美容師アスワも「先日も女優の△△さん来ましたよ、こちらのお客様の隣に座ってました」とアスワが担当する客の男(福徳)に言うが、男は有名人には疎いようだった。やがてアスワの客である男のブローが終わり、ワックスで髪を整えられ、カットクロスをはずされると、男は軍服を着ていた。耳あてのついた帽子をかぶって出ていく。「軍人……ワックスつけてたな」
コンパ
カネコとユウキ(阿諏訪)のもとに来るゴトウ。先にいた2人を見て「あれ……? 今日は3vs3?」いや、2vs2だよ。「や、……コンパやねんな? 俺と、カネコと、そちらは……」 あ、ユウキちゃんね。ほら、ゴトウ、ボーイッシュな子が好きって言ってたから。「待て。これはボーイッシュなんてもんやないぞ。男や」 ユウキの風貌で揉める男子2人。そこへ遅れてやってきたユウキの友だち、ヒロミ(福徳)。ユウキの女子高時代の同級生というが、どうみても男だ。 10分で切り上げて帰ろうと決意する男子2人。だが粛々とコンパを遂行するうちにボーイッシュな女子2人の魅力に惑わされはじめる。
居酒屋
居酒屋に軍服の男。耳あてつきの帽子をかぶっている。 あとから入店してきた青年(金子)と友人(後藤)。青年は軍人に背を向けて座るので軍人に気づかない。が、店の頻繁なサーブミスや友人がさっきまでいた変な客の話から、さてはここに彼がいたのではと感づき、いてもたってもいられなくなり青年は店を飛び出す。軍人を探しに。
笑顔が見たくて
田舎の病院。心臓の病気を患い入院しているフクトクを見舞うゴトウ。ゴトウはアスワやカネコとともに5年前、バンドデビューを目指して東京に出ていた。 バンド活動は順調かと尋ねるフクトクに、近ごろはドームツアーをやっている、大手レコード会社から出したデビューシングルは発売1週間で60万枚売れた、と報告するゴトウ。期待以上のバンドの活躍を聞いて手術への励みになったと喜ぶフクトク。そこへアスワとカネコも見舞いに現れる。が、慌てて2人を追い返そうとするゴトウ。 デビューおめでとう、とあとから来た2人にも寿ぐフクトク。「デビュー……?」 なんのことかわからない2人。
やっと逢えたね
街でチンピラ2人(後藤、阿諏訪)と肩がぶつかり脅される青年(金子)。彼をかばおうと駆けつけてきたのは、あのときからずっと探していた軍人だった。

 オープニングムービーは前回同様The Monkees『Steppin' Stone』にのせて今回のフライヤーイラストと本人たちの写真を使った出演者紹介。幕間ではSmall Faces『Sha-La-La-La-Lee』が聞こえてきたし、エンディングムービーはThe Monkees『Daydream Believer』にのせて4人の稽古シーンを流していました。仲睦まじき稽古風景、甘酸っぱくてよかったです。

 他のミュージシャンの曲も使われてたのかもしれないけど、思い当たる曲を並べてみると、欧米ロックの4人組の曲を選んでいるのかな? それは(彼ら4人を集めた人たちが)彼ら4人にそういうカッコよさやお茶目さを描いているということと理解してよろしいか? ……なるほどね。大賛成です。

 今回はねえ、なんだかもー、ひたすら楽しかった! ネタはどれもオーソドックスなのだけど、やりとりの密度がぐんと高まっていて、4人でみっちり時間をかけて練ったんだなと思える。Twitterで阿諏訪さんやスラッシュパイルの片山さんのツイートを見るかぎり、ずいぶん練習してるんだなと思ってたけど、当日のトークでは打ち合わせ含め稽古10回やったと言ってたっけな。 以下おもいつくままに。あ、敬称つけたりつけなかったりです。つけてないときのほうがテンション高い(知るかよ)。

  • 1つのコント内で役割やアプローチが変化していく、その変化を丁寧に描いたネタが印象的だった。たとえば『コンパ』で、ボーイッシュを超えた(ほぼ男の)女子らにヒいてた男2人が、気づくと彼女らに惹かれていってる描写はやりとりに省略がなくて、ほんとそうだなーと感心。*1 『最期の言葉』で後藤さんがどんどん師匠に批判的になっていくのも良い加減だった。
  • 前の週まで、各賞レースの予選で1日に4分ネタ60組とかを祈りながら見てたりしたので、まあそれもそれの醍醐味があって大変たのしかったのですけど、それでヘトヘトになっていたところにあの4人が時間たっぷり使って見せてくれた新作コントはご褒美のように贅沢でした。祝日の本多劇場で、しみじみと、好きだ、この人たちが、と。
  • 4月の「ジャル!シティ!」のあとにそれぞれの単独に行って、そのうえで今回を見て、やっぱり4人とも「ジャル!シティ!」でしか見せない演技があるなあ、と。しかも前回よりもいっそう、真面目で巧いジャルジャルを軸にして遊びまわる天真爛漫なうしろシティを堪能しました。 4月には意外に感じた「4人になるとジャルジャルが礎に見える」というのも、この数ヶ月のジャルジャル研究(ただただDVD見てた)により気のせいじゃなかったとわかって、それが顕著になるこのコントユニットとの再会がますます楽しみでした。
  • 大道芸人』。パフォーマー(福徳)でもてあそぶ金子阿諏訪のヘラヘラした若者たち、いたずらっ子だなんてカワイイもんじゃなくてちょっと怖かった。それくらい悪さが巧かったということです。特に阿諏訪さん。いる、ああいう、蔑ろにできそうな対象に目ざとい若者。
  • 大道芸人』。一方で福徳さんが本当に、銅像のように、生を感じない静止っぷりがすごい。ふつう"動かない"役がいるコントって、ちょっと揺らぎを見せることもオモシロにするでしょう。ハナ肇銅像とかラーメンズの片桐学概論のカタギリとか。そういうんじゃない。腕を胸の高さまで上げ、歩いているようなポーズで完全静止して、目の前でわちゃわちゃやられても揺らがない。無機物のようにもなれる筋力と動じなさ。あの筋肉はダテじゃない。ジャルジャルのコントで福徳が見せる無限のしつこさと、パフォーマーのあの完全静止は同じ部類の能力だと思う。
  • 小道具としてスマートフォンが出てくるネタが4つありましたね。『大道芸人』『最期の言葉』『コンパ』『居酒屋』。前回は1つもなかったよね。ジャルジャルはコントでケータイを使わない印象があるから、この点でも新鮮でした。スマホを使う世界にいるジャルジャルが。
  • あと今回は、チミら本気で惚れさせにかかってるなコンニャロメ、売るなら買うよ、やってやんよと節々で思いましたね。先方のあざとさにこっちもケンカ腰。 『美容院』で明転したとき同時多発的に「ヒィッ」と女性の小さく短い悲鳴が聞こえたんだけど、わかる。わかるよ。美容師役で白シャツ着た後藤さんと阿諏訪さんてば、会場の空気がひきつるほどかっこよかったですよね……。わたしも昼に見て美しさにぎょっとして(半年前に比べてジャルジャルを見馴れてきてたので油断してた)、夜公演は「このあと美容院ネタくる……」と暗転中から歯を食いしばって臨んだからね。
  • とかく全体的に白シャツ率と接触率が高くなかったですか。っんとに。ありがとうございます。 接触率が高いのはしかし、4人それぞれの、このチーム「ジャル!シティ!」(出演者4人だけでなくこの公演をつくる人たち)への信頼度の高まりですよね。話を崇高にして直前のアレをうやむやにしますよ。
  • エンドトーク昼。本多劇場の暗転が暗すぎると第一声で騒ぐ4人。へえ、そうなんだ。
  • 稽古をふりかえり、阿諏訪氏についてジャルジャル先輩2人が「返事が間違ってる」と。ネタでギターを使うことになって阿諏訪氏が「僕ギター弾けますよ」と名乗りでたので福徳が「ギター弾けんねや」と言うと「(知らないのかという顔で)……はあ」と返事。 また、料理をするのが好きだという主張にも福徳が「料理できんねや」と言うと「(知らないのかという顔で)はあ。……僕の料理本、読んでないんスか?」と。料理本だしてるとか知るか!と福徳先輩ご立腹。
  • 後藤も後藤で阿諏訪氏に「稽古場いくといつも3人(ジャルジャル+金子)が揃っとらんかった?」と、阿諏訪氏の入り時間の遅さをほのめかす。 この、周りの様子から言って相手を説く感じ、すげー後藤! 「かならず3分遅れんねんな。スターの入り時間や」 それに対して阿諏訪「……はあ」
  • 「返事間違ってる」って表現はジャルジャルのコントタイトルみたいでいいよね。"返事間違ってる奴"。この話題を始めるとき後藤が福徳に「あの……(阿諏訪をさして)返事間違ってんねんな」と確認して、まず福徳に話させたのも良かった。
  • 「最後は前回同様、円陣組んで(手を重ねて)オーッで終わろう」とまとめようとする福徳。しかし3人は「そんなのやったっけ…?」 前回も来たお客さんに聞くがやってないという人とやってたという人に分かれ*2「じゃあ(前回やったと思ってる)福徳1人でやったら」と。3人が離れて見守るなか福徳1人が手前の空(くう)に手をかざし「…せーの、オーッ!……」で暗転。
  • エンドトーク夜。コント『笑顔が見たくて』で後藤をボーカルとしたバンドの演奏シーンがあるのだけど、そこで歌の入るタイミングを見失ってたという後藤。わたしも後藤さんが実際に歌うとわかって本筋と関係なくリキみました。ジャルジャルは2人とも音程とかリズム感とかがそんなに、その、アレだからさ……。
  • 昼夜間の休憩中は楽屋で4人、延々とアドリブコントを繰り広げてしまいそこで体力消耗したそうな。 金子「福徳さんがすぐに大きい声を出す(とコントが始まる)」。 後藤「楽屋でコントやるとお客さんがいないから(笑ってもらえなくて)ただただ高みを目指してエスカレートして体力消耗するだけ」 阿諏訪「後藤さん、疲れて途中で寝ちゃいましたもんね」 ひゃー。この4人がじゃれあってたうえに後藤が途中で寝ちゃうとか、エピソードだけ聞くとなんてかわいいの……! わたし、その時間の本多劇場の楽屋になりたい。わたしは本多劇場になりたい。
  • という話の途中から金子が福徳にけしかけて小競り合いが始まる。大道芸人ネタ同様、後藤は福徳を諭すだけで元凶の金子の威嚇には気づかない。やがて小競り合いに阿諏訪もくわわり、 阿諏訪「(金子に向かって)先輩に失礼だろ!謝れーっ!」 金子「俺は悪くない、お前が謝ればいいだろ!」 阿諏訪「なんで俺がコイツ(背後にいる福徳をさす)に謝らなけりゃいけないんだよ!」 福徳「コイツってなんやー!?」 阿諏訪「(振り返って福徳に)なんだとー!」 ……みたいな3人のやりとりを、笑みをたたえたプレーンな顔で見守る後藤。 ふと怒声をとめて阿諏訪「……後藤さん、もしかして入るタイミング見失ってます?」
  • 福徳は、子どもの頃から患う体の一部の汗疹によるかゆみがピークを迎えて大変だったという話。その体の一部というのが、ガキんちょが言いたがるような部位で、楽屋でそれを全開にして薬を塗りたくってたと金子阿諏訪に明かされる。そして4人で男子小学生みたいにその部位をただただ連呼してるのが、それまでの白シャツでうっとりさせてきたのとか台無しになって微笑ましかったですね(能面)。
  • 最後は昼に組み損ねた円陣を組もうと福徳さん。しかし福徳さんの手が患部を触っているのを見ているからなあと気が進まない金子阿諏訪。うつらへんよ、と悲しそうな福徳。そういうことならば福徳はその部位に手を当てて1人円陣をやれば良い、こっちはこっちで金子阿諏訪をその部位だと思って円陣を組むと後藤さんの優しい提案。その部位になるのはいやだと抗議する金子さんに、じゃあ俺がその部位になってもええでと役割を変わってあげる優しい後藤さん。(これ、ぼやかしてまで詳細書いておく意味あるのかな)

 むは。思い返すと一瞬一瞬にコメントしたくなるけどキリがないのでこのへんで。

 こればっかり何度も言うけど、本当に良いライブだった。6月にこの第二回の開催が発表されて、楽しみな気持ちが抑えきれなかったです。うしろシティファンの才野さん(d:id:saino)と組んで先行つっこんで才野さんがA列、わたしがB列を当てて互いの贔屓への愛と運を比べ合ったことも*3、わたしが花を贈ろうかなとつぶやくと才野さんが即答で「贈りましょう」とノッてくれたことも*4、だけどその花の贈り主の名前でモメたことも*5、花屋さんに「!」の数と位置を伝えるのに苦労したことも、1ヶ月も前から着ていくものを母に相談したことも、未来のファンを育てようと中学1年生の姪とその母(=姉)にもチケットプレゼントしたことも、ぜんぶ楽しかった。勝手にひそかにお祭り騒ぎしてました。だって4月の「ジャル!シティ!」がわたしを今夏、ジャルジャル狂想曲に踊らせた発端だからさ。全力で楽しむことで、第二回の開催ほんとうにありがとう、というお礼にしたかった。そして第二回、期待以上のとても良いライブを見せてくれて、本当にありがとうございます。もし第三回があるなら、ううん、「もし」なんて言わせないで、きっとまた見せてね。強く願いながら、わたしも仕事がんばったり部屋の掃除を心がけたりして待ちますね。

*1:ところでわたしは後藤さんが女の子を口説くというシーンをコントでもなんでも見るのが初めてで、今回の説教型の口説き(親がウザイというユウキに「ユウキちゃんにはそんなこと言うてほしくない、こんなに可愛い子を育ててくれた親御さんなんやから」とか)にへんな合点がいった自分が気持ち悪くてそれも楽しかったです。

*2:厳密にはやってなかったような。交差して握手しよう、と福徳さんが提案してました。→前回

*3:才野さんは4月の先行もA列当ててたんだよ。わたしは落ちました。

*4:相手が自分と同程度かそれ以上のアレだと話が早いですね

*5:相手が自分と同程度かそれ以上のアレだと面倒くさい