『猫とあほんだら』

猫とあほんだら

猫とあほんだら

町田康の猫シリーズエッセイ最新刊。今回も外で読むにはキケンなニマニマの一冊だった。もーね、町田さんの厳かなるデレデレ、毅然としたオトボケがたまらなくてさ!
でもやっぱりそれだけではなくて、命への責任と覚悟。「かわいい楽しそう猫飼いたい!」とは気軽に思わせない。問題や悲しみを省かず過剰にせずに書いていて、ニマニマしながらもふと気が引き締まる。涙がおちる。
『猫とあほんだら』を読み終えて、本を閉じたのがさびしくて『猫にかまけて』を引っぱりだしてきて再々々読して(大好きで、なんども読み返してる)、それを読み終わってもまだまだ「読んでいたくて」、『猫のあしあと』を読もうと部屋を探したら見つからなくて、改めて買って、読んで、ほう、好きだなあ、って。そんなふうにこの半月ほど、町田家に棲んでいたワタクシ。
ところで、これほど町田猫エッセイにぐいいとハマっている私は動物を飼ったことがない。共感することがなくてもこれだけ読ませるこのシリーズ、飼ったことのある人は読んでどう感じるのだろう。話を聞いてみたいな。

『猫とあほんだら』印象にのこったところ

  • 雨の日の旅行先*1で拾った子猫たち(シャンティーとパンク)。p.15では弱々しく段ボールの中からこちらを見上げていたのが、p.114、p.115ではじつに立派で美しい猫たちに成長していてハッとした。しかもこのページ構成。計算してるのか偶然なのか、ちょうど100ページ後に健やかに美しく育った姿を見せられるというのは、妙にぐっとくる。
  • や、シャンティーとパンクだけでなく、町田家の数いる猫たち、みんな美しいです。ヒトの飼い猫だが、みとれる。
  • シリーズを重ねるごとに夫婦の会話の登場率が増えてきているような。そのやりとりがウラヤマおかしい。このエッセイから読み取れる、著者の、奥様への尊敬と信頼には、なぜか読者の自分が誇らしくなる。
  • p.12《小説家というのは思いついたことを必ず形にしたいし、形にできる、と思いこんでいる人種である。》 うふふ。
  • このたびも脱線が贅沢。これ読むと、マーチダ風脱線を自分の文章でも試みたくなるんだよね。って自分が書く文章、脱するレールすら敷かれてないのだけれども。

猫にかまけて

猫にかまけて

猫のあしあと

猫のあしあと

あとさ、私が持ってるこの町田康の「猫」シリーズ3作。どれも、天地でいう天側の裁断がガタガタなんだけど、これってわざとそうすることもあるのかな?装丁の一部というか。他の手持ちの単行本ではここまで揃いが粗い裁断を見かけないので、気になっていまス。

*1:正確には伊豆半島での引越先物件まわり中