子どもはボタンを押したがる

 休暇だった。有給休暇でなく、日程を選べる社休みたいなやつで、それの最後の1日を消化した。この社休は取得しないと人事からしつこく取得を促される。それでも消化しきらないと年度末のもっとも忙しい時期に強制的に休まされるのだそうだ。
 今年度もよく休んだ。昨年のこの時期に「今年度は社会人になってもっとも休暇をとった1年ではないか」と思っていたが、今年度はさらにそれをうわまっている。有休と社休、それに人間ドック休や結婚休をあわせて年度のはじめには自由選択の休暇権利が31日あったのが、今は残り4日だ。自分はこれといって得意なことが何もないと思ってきたが、休むことに関してならなかなか積極的にふるまえるらしい。コツは、予定がなくともマイルールに則って休みを決めてしまうことと、「週に5日間も働くのはムリ」と自分に言い聞かせておくことだ。うっかり週に5日も働いてしまった金曜の夜は、めちゃめちゃえらい、なかなかできることじゃない、と己を激励する。
 などと言ってられる職場環境になって本当にありがたい。今の職場に4年いるが、2年めまでは1度も1日休をとれなかったし(半休を年に1度とったぐらいか)、残業の日々だった。世間でいろいろがあったからか、会社も社員も変わろうとして変わっている感触がある。

 8時にゴミ出し、録画消化を少しして9時に夫と朝食(パンと夫製ツナ葱オムレツ、クリームシチュー)、夫を送りだして布団に再度もぐって12時まで寝る。夢に母親がでてきて目が覚める。朝は曇っていたが日が出てきたようなので洗濯機をまわして布団にもぐって漫画を読む。洗濯物を干して布団にもぐって漫画を読む。岡田あ〜みん『ルナティック雑技団』の再読(フィギュアスケートのザギトワという選手がエキシビションでトラ柄全身タイツを着ていたのを見て愛咲ルイが恋しくなった)と、岡崎京子『カトゥーンズ』をKindleで(岡崎京子を初めて読む男性が「面白い」とツイートしてるのを見かけて)。『カトゥーンズ』は自分が小学生の頃、姉の部屋でぬすみ読んだ月刊カドカワに連載されていた漫画だ。ほとんどの章を当時に読んでいたもよう。連載当時でも「エッチな描写がある」ぐらいには把握していたが、36歳のいま読んでみて、これもこれもわかってなかったなと懐かしい気持ちになった。エッチな絵よりも、会話やストーリーが踏み込んでるんだな。
 呼び鈴が鳴ったので玄関のドアを開けると誰もいない、と思ったらお隣さんがそちらの部屋のドアの前で「あっ、子どもが押しました! すみません!」と謝ってきた。どうやら4歳の子が呼び鈴を押したようで、平日の16時すぎだから我が家に誰もいないだろうとお隣さんも思っていたらしい。それはそうだから全然いい。お隣のお子さんは機嫌よさそうでかわいかった。子どもはボタンを押したがる。以前、藤子・F・不二雄ミュージアムに行ったとき、ミュージアムに向かう専用バスの降りますボタンを子どもたちが押しまくっていたのを思いだす。通常の路線バスとちがって、ボタンを押すたびに音が鳴る。駅からミュージアムまで直行だから「降ります」も何もない。ただ押されるためだけにある、純粋ボタン。
 昼食をとりそびれたなと思いながらスナック菓子を食べ、ラジオの録りためを聞きながら台所掃除。18時すぎに夫が帰ってきた(「帰るよ」メッセージに気づかなかった)のであわてて食材を買いに出る。献立を何も考えていなかったし昼のかわりにスナック菓子を食べていたので野菜が食べたいと思う。鍋にする。豚バラ、長葱、白菜、厚揚げ、しめじ、えのき、豆もやしを合わせだしで炊いてポン酢で。夫はヱビスビール、自分は"東洋美人『一歩』直汲み生"を飲む。
 食後、津村記久子『ディス・イズ・ザ・デイ』の9話を夫が朗読する。主人公の若い青年と、疎遠だった祖母の話。少し涙する。やはり良い。母から電話がかかってきて、メールの調子が悪いから時間があるときパソコンを見にきてほしいと依頼される。
 苺を食べながら、キーワード"三谷幸喜"自動録画でとれていた『KinKi Kidsのブンブブーン』という番組と『古畑任三郎市川染五郎回を見る。KinKi Kidsの番組で、三谷さんはレゴブロックを組み立てていた。作業が進むほどにKinKi Kidsのふたりに疎まれていた。