20人の誰の顔も見ず立ち去る

 仕事がやたらと小忙しい。予定業務と別に、毎日2〜3件の突発的な依頼や相談があって、これらを翌日に持ち越すと同様にまた突発的な依頼が溜まっていくし残業はしたくないので定時までに即日全力で打ち返していく。月の切り替わりとともに、お盆と下期を控えていろいろ前倒しになっているのだろう。デスクワークなのにハァハァと息を切らしていることがあり、集中するとたまに息を止めているらしいことに気づく。6月・7月中旬ぐらいまで不安になるほど暇だったのでこちらのほうがありがたい。
 仕事がそんな具合だとTwitterなど娯楽でも文字を追ったり書いたりするための脳のエネルギーがなく、退勤まぎわに頭から湯気をあげながらぼーっと東京アメッシュを眺めていた。夫から、仕事で遅くなり夕飯はすませてくる旨メッセージあり。

 職場を出ると、雨がやんだばかりという道と空気の濡れかたで、10月下旬のような肌寒さ。いつもの3駅を歩く途中で伝説ポケモンのファイヤーがいるジムを見つける。新宿の端の狭い路地、夏季休業中の貼紙がある店の前、スパゲティを食べている猫の像(どういうことだ)がジムになっていた。初めて入る道だ。ジムに近づいていくと目で数えても20人以上おり、ファイヤー戦に参加するとプレイヤーが18人で、1分ほどでファイヤーを倒した。楽勝。神頼みしながら率直にボールを投げて(カーブボールはあきらめた)、3球めで「やったー!」と出た。20人の誰の顔も見ず立ち去る。
 ファイヤー捕獲が嬉しく、いつものゴールの3駅めの前まで来てもう1駅いけるかも、もう1駅、通りかかった武蔵野うどんの店で夕飯もすませもう1駅、と歩いているうちに地元駅についた。地図上の距離でいうと7.5km歩いたことになる。

 21時ごろに帰宅。自分が家にあがってから5分もしないうちに夫も帰ってくる。月火水と見ていなかった『ひよっこ』を二人で見る。『ひよっこ』、ここまでずっと丁寧で見事なドラマだと思ってきたが、先週からの川元世津子(菅野美穂)の再登場と父親沢村一樹)の記憶喪失のターンがちがうドラマのようにかったるい。有名女優の急接近と記憶喪失、飛び道具に飛び道具がかさなってしらけるのかな。そりゃ有名女優と急接近することも肉親が記憶喪失になる悲しみも現実に起こりうることだけど、みね子たちの地道に生きる様子が本当にすばらしく描かれてきたから、そこでいきなり魔法が使える設定にされても……という感じ。まあドラマとしてどこかで派手な展開をつけないといけないのでしょうが。菅野美穂の演技も一貫性がなくて(思うことがいろいろあるということなのだろうけど)この人こんなに演技がとっちらかっていたっけ?と心配になった。周りの人々によるみね子の慰めかたも、あえてだろうけどとってつけたように記号的、コント的で戸惑う。