サラダうどん

  • サラダうどん(山盛りのレタス水菜きゅうりミニトマト、ツナを梅干しとマヨネーズで和えたソース)
  • 切り干し大根と納豆の辛み和え(切り干し大根、納豆、にんじん、シソを豆板醤とみりんで和えて、すりごま)
  • 肉みそオムレツ
  • 紫キャベツのマリネ
  • ヱビスビール、ラガーズハイ

 サラダうどんは前晩からリクエストしていた。夏になると母がおやつや夜食にちゃちゃっと作ってくれていたツナ梅マヨソースのサラダうどんが好きで(おやつにうどんが出る家だった)、夏だのでそれを頼む、と。そう伝えたときにわたしがイメージしていたサラダうどんのサラダ部分は冷やし中華の具程度の量で、サラダうどんの皿は冷やし中華のような浅い皿だったのだが、家主は"サラダ"の部分に忠実で、各々が大鉢、山盛りサラダうどん入り、という具合になった。伝達はむずかしいが野菜は多いほうがいい。
 リクエストしたのはサラダうどんだけだったので帰ったらすぐ食べられるだろうと思ったら、ありがたいことにサラダうどんの他にいろいろ作ろうとしてくれていた。手伝いを申し出ると、紫キャベツの千切りを塩で揉んでくれと言われ、はりきって塩で揉み込む。なるほど、持て余していた紫キャベツもこれで一気に消化できる。青い汁が出てきた。アルカリ性だ。その青い汁を捨て、ワインビネガーなどを含むマリネだれに和えるとこんどは赤い汁が出た。酸性だ。そうやって科学の実験をしているうちに辛み和えができてきたのでさあ食べよう、と食卓についたら、家主は、あと1品、肉みそオムレツを作る、ついてはその肉みそを今から作るといって豚挽肉を出してきた。わたしは「先に献立を言ってくれればもっと手伝ったのに。もっとわたしを頼ってほしい」と憤り、前晩の食べかけのコーンチップをモリモリ食べ始めた。わたしは実現したいことを先に宣言してからとりかかる(ないしは、とりかからない)人間なので周りに助けてもらってばかりいるが、家主は完成するまで他人に計画を言わない。聞き出してもすべてを言わない。なるべくぜんぶ自分でやりたいのだそうだ。モリモリと怒ってるうちに肉みそはでき、その後1分ほどで肉みそオムレツはできてしまい、覚悟してたよりずっと早く完成したおかげかあるいはコーンチップを食べたおかげでわたしの苛立ちはおさまった。
 サラダうどんは体になじんだおいしさで、初めて食べる辛み和えと肉みそオムレツは異様においしかった。肉みそはまだ残りがあると聞いて、明日の弁当に入れるんだと宣言する。辛み和えも本当は弁当に詰めたいがにおいが厳しいかもしれない、だからといってこんや食べきらず、明日の朝飯と夕飯にも食べることを楽しみにしているなどとも予告しておいた。青い汁、赤い汁に興じた紫キャベツはどうにも塩からい。保存食だからこんなものだ、と家主は言ってくれたが、2人ともマリネは三口も食べなかったと思う。いつまでも紫キャベツと折り合いがつかない。