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声に出して言ったこと

 「代々木上原で合流するよ」と書かれていた。ネルコとヒロコで町田に遊びにいく、ついては小田急線12時29分新宿発に乗って向かうが一緒にどうか、と、さやかさんを誘ったら、そのように、途中駅から合流する旨のメールが返ってきたのだ。走る電車で待ち合わせ。そんなドラマチックなことが容易にできるものなのだろうか。まあ、できるのだろうが、移動する待ち合わせ場所というのに実感が湧かない。了解、とは打てず「状況わかったら連絡ちょうだい」と返信する。

 果たしてさやかさんは代々木上原から合流した。

 新宿から座って乗ってきたネルコとヒロコの前にさやかさんが立つ。あなたが来るまで、ヒロコ(東京在住)はネルコ(京都在住)に関西ローカル番組のすばらしさを説いていたのよと報告すると、さやかさんは心得た様子だった。
 本日の3人が揃って、挨拶もそこそこに Ingress の話。3人とも Ingress を、やっていないのだが、やっている人の夢中ぶりがおもしろい、とその人たちのエピソードを持ち寄って Ingress の輪郭を引いた。やっていない2人にわたしは「赤チームとか緑チームとか、どうやってチームが決まるの?」と訊いた。夢中でやってる人たちには訊けないでいた疑問だ。
 町田に着き、布博・ブローチ博に向かう。会場の町田パリオという建物が、町田駅直結とは思えぬ味わい深さで、これはブローチ博に合う、パリオかわいいよパリオ、と入る前から盛り上がった。

 会場でわたしは、ある作家さんのブース前から動けなくなっていた。ここにあるブローチ、ぜんぶほしい、ぜんぶ。買えなくは、ない。が、そんなことしていいのか。そういう買い方を自分に許していいのか。そんな自分がこのブローチをつけて似合うだろうか。と自問自答を繰り返していたところ、ふと、隣にいたさやかさんの視線に気づく。よもやこの人ぜんぶ買う気じゃなかろうか、と思われてやしないだろうか。待って。ちがうんだ。彼女(と自分)を安心させたくてわたしは「こういうのは一気に買ってはいけない。大事にたのしまなければ」と告げる。さやかさんは「それは……一気になにかをしたことある人の言葉だね」となんだか納得していた。
 おのおの、気がすんだり、(財布が)ゲームオーバーになったりして遅めの昼にうつった。午後三時、きめ細やかな泡のビールを飲みながら粛々と、見せて自慢の会。まずブローチの部。ネルさやの二人は選び抜いた1つか2つの品を出してみせた。わたしは、これと、これと、これと、これと……と1つか2つよりはもう少し、倍ともう少しぐらいの数のブローチを袋から取り出してみせた。
 布の部。わたしは友人へのプレゼント用にと、ある品を1点。さやかさんは「小早川を持ち歩くための」ポーチと、あと、どうしてか(どこに売ってたのか)レトルトカレーを買っていた。そして今度はネルコさんが、玉入れの圧勝チームさながら、これと、これと、これと……とやっていた。

 阿佐ヶ谷に移動して、自慢のジェラート屋シンチェリータへ。1カップ3種類、3人で9種類たのめるからね。町田駅で電車に乗る前からそう言って聞かせていたので、初入店の2人の注文は潔かった。ココ、ノッチョーラ、パッションマンゴー、ピスタチオ、プラム、ペパーミント、メルノワ、ワイルドミルク、和梨を注文(いま気づいたが、パ行がリーチだ)。
 おいしさに驚く2人の前で地元の人間として鼻高々を気取りたかったが、何度も来ている自分もまだ新鮮に、おいしさに驚く。ミルクティーみたいな色の、なんだっけこれ、と食べてみるとなんとペパーミントで、色からは想像つかないみずみずしいさわやかさ。世間においしいミントアイスはもう出揃ったろうと思っていたのは浅はかだった。和梨は、こう言ってもよいのか、餅の味がしておいしかった。

 ネルコさんを次の予定に送り出し、パズル部のさやかさんにくっついて高円寺の『すごろくや』へ。入店すると、迎え出た女性の店員さんが「こんにちは」につづけて「ちょうどゲームが始まりますのでどうぞ」とゲーム卓に案内してくれる。え、え、とたじろいでさやかさんを見ると彼女はもう荷物をおろして席につこうとしていた。卓には男性の店員さん1人と、若い男女のお客さんと、我々2人の計5人。お辞儀だけして自己紹介もせずゲームが始まる。
 さまざまな色や形の積木をルールにそって積み上げていくゲーム(ぞうとねずみの絵入り)と、お題で思い浮かぶ3色を出して他の人との一致を図るゲーム(動物型の駒とパレットをつかう)をやった。3色のゲームで「遊園地の3色」とのお題が出たとき、みんなが1色や2色なら誰かと一致するなか、さやかさんとわたしだけが3色とも一致していた。そうと知ったのは、男性のお客さんが「わ、おふたり気が合うんですねえ」と感心してくれたからだ。
 遊んだゲームはどちらも名前を覚えるのを忘れた。が、ひょっとするとメーカーは2つともHABAというところかもしれない。というのも、遊んだあとに店内の商品を見ていたら、さっきやった2つのゲームと似たテイストのパッケージがずらり並んでいて、どれにもHABAというロゴが入っていたのだ。見るとその棚の大部分がHABA製品だった。わたしは勇気を出してさやかさんに「HABAをきかしてるね」と伝えた。声に出して言ったから、メーカー名は覚えている。