草盆栽、運転実況

6 Works Exhibition』に行った。
植木屋の大山邦子さん*1の草盆栽を目当てにいったのだけど、他の作家さんの作品も「欲しい!」と思わせる素晴らしさだった。しかも(このことを絶賛するのはためらわれるけど)作品がどれもお手頃価格で、欲しいと思ったものが、いま財布の中に入ってるお金でアレモコレモと買えてしまう値段だったのだ。ご一緒したYさんとナチュラルに通販番組コント(「まぁこれ素敵」「でも、お高いんでしょう?」「はて……(値札を見て)お安い!」の繰り返し)を繰りひろげてしまうような。
作品の値段が安いことを「(絶賛するのはためらわれるけど)」と書いたのは、たとえば私があれらを作ることを生業にしていたらあの価格じゃ厳しいだろうなと思ったから。在廊のフェルト作家の方も「値段のつけ方がわからなくて」と言っていたし、けしてあれが一般的な価格ではないということを野暮だが言っておきたい。でもそのうえで、だから、「あっ、素敵」と思ったコを気軽に連れて帰れるのが嬉しく楽しい。
邦子さんの草盆栽はすごくかっこよかった。鉢に寄せ植えました、という感じではなくて、山に自生する草花をそこだけ掘りすくって持ってきたような野性味といじらしさがある。あの鉢を置くだけで部屋の中に渋い庭ができるなあ。
展示会、行きは運良くYさんの車に乗せてもらった。Yさんは昨年末に免許を取ったばかりで*2、練習のためにいろんな人を車に乗せて運転チャンスを積極的に作ってるそうな。Yさんだって電車利用しやすいところに住んでるだろうに、えらい。私なんて平成15年に免許取得して以来1度も車に乗ってない(おっ、今年はペーパードライバー10周年か)。
Yさんは、もともと気遣いの人ではあるが(努めてそう見せないときもあるが)、運転するといっそう気遣いが細やかになるようだった。「邦子さんに何分到着予定って連絡してもらえる?あ、でもケータイの文字で酔うかもしれないから無理しなくてもいいです」といった具合に。運転もとても丁寧で、本人は「死のドライブへようこそ」みたいなことを言っていたがまったく不安はなかった。ただ、Yさんは運転に際して思うことをすべて言葉にした。「止まったことを気づかせないほどやさしく……ブレーキ!」と言う(言うからブレーキを踏んだのだなとわかる)。踏切を渡るときも「前の車には続かず止まって……窓を開け左右を見て……」と教科書を読み上げるように言ったり(素晴らしい)、「うしろの赤い車は俺たちを遅いと思ってるだろうか」「でも俺たちが遅いんじゃないんです、前の車がゆっくりなんですよ……と」「良かった、うしろ、車は赤いが煽ってこない」とか「このバイクを越したくはない……でも越すのか……だが?次の信号で、また並ぶ!」など、道中に対してずっと新鮮そうに実況していた。
私は自分が運転しないから漠然とクルマコワイと思って生きてきたが、免許取りたてYさんの運転実況にはペーパードライバー歴10年の私すら運転席にいるような臨場感があり(運転席の臨場感っていうか、助手席にいるんだけど)、一緒になって後続車を見直したり、どっちつかずのバイクを憎からず思ったり、道路整備員が若く可愛い女の子でときめいたりと、せわしなくて楽しかった。実況って、面白いんだな。

*1:高尾山をご一緒したクニコさん http://d.hatena.ne.jp/hiloco/20121119#p1

*2:Yさんが通った教習所での餅つき大会話 http://d.hatena.ne.jp/hiloco/20130114#p1