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ぱいかじ南海作戦


椎名誠さんの本は子どもの頃から読んできたし、学生の頃は細川徹さんのつくるオモシロに夢中だった。わたしに濃い影響を与えた2人だが、まさかこの2人の名前が1つの作品に並ぶとは。
だって椎名さんはいつも日焼けしていてウハハと笑い、半袖シャツも肩までまくって世界中を旅しながら太陽の下でビールを飲み、メンチカツを塩で食べるやつがあるか、だぼだぼソースが正解ですなどと叫んでるイメージで、細川さんはクーラーが効きすぎた部屋で長袖着てウフフと笑い、背中丸めてコントの台本を書き、牛丼並は食べきれないほどの少食……というイメージがあったから。とにかく、わたしの中で両極端に位置する2人が、原作者と脚本・監督としてつながるとは夢にも思わなかったのだ。
そんな意外さを心配する必要はまったくない映画だった。細川さんが椎名さんの原作に惚れこんで味わって作っているのを感じるし、そのうえで、細川さんの色がしっかり出ていたように思う。特に、オッコチ(永山絢斗)に惹かれていく佐々木(阿部サダヲ)のナレーションや、ある人々の謝罪の描写はザ・細川徹だなーと思った。
ところでこの映画、最初から最後まで、とにかくずーっとサダヲさんで満たされているのよね。出ずっぱりなだけでなく、主人公によるナレーションも量が多い(そのナレーションの多さをネタにしたようなシーンもあって、これも細川徹的だった)。これはある意味で贅沢。この作品におけるサダヲ・マイベストは、島に来たばかりのオッコチに先輩風を吹かせる様子と、ある戦いに挑む決心をした険しい顔の滑稽さです。
それからオッコチ役を演じる永山絢斗くんがじつに魅力的。演技が自然で、おちゃめで、要潤さんをもっと若く爽やかにしたような感じ。男性も惚れるんじゃないかと思う。で、わたしはこの作品で初めて永山くんを認識したのだけど、調べたら瑛太くんの弟なのね(要潤を若くした感じ、って……)。彼の出演作はこれまでもいくつか見ているはずなのに全然気づかなかったな。でもそのおかげで、よけいに彼に惹かれたのかも。
そのほかの役者もみんな、みんな良かったな。関西弁の佐々木希ちゃんがいっそう可愛かったし、貫地谷しほりちゃん演じる淡々と頼もしい女の子も素敵だった。五月女ケイ子さんの海と太陽の似合わなさもいい味。
エンドロール。つかみどころなくふくよかなメロディの主題歌(星野源『パロディ』)と、クレジットの合間に現れる沢野ひとしさんの謎に平和なイラストがすごく合って、最後まで心地よい。
ストーリーの筋とは別に、日々続く平和な海浜生活と人間関係に、時折「だいぶファンタジーだな」と思うこともないではないが、そういう細かいことは気にしたら損、という感じの楽しくて気持ちの良い映画。景色もすばらしいし、可能な映画館ならビール持ち込んで観たいところ。