選句用紙を書き起こし。詠み人のわからない30句。実際は縦書きです。
- わが句あり秋の素足に似て恥ずかし
- 立冬や余震慣れして座ってる
- きちきちを四つ飛ばして逢瀬かな
- ぞうさんのしっぽはコードだよ月夜
- 東京は空がじょうずに澄むところ
- 自動車の動きは丸く秋うらら
- この先は未来コード引き抜け流星
- 一目惚れ多発九月の逢魔ノ辻
- すこやかに未来あるべし小鳥来る
- 逢わないと決めた「ばーか」にくまん食う
- 燈火親しもつれしコードそのままに
- 冷めて色濃い芋の煮っころがし淋し
- ボールペン回す間に恋となる
- 白桃のまだ決まらないほくろの場所
- 死んでいて月下や居なくなれぬ蛇
- 詩へ螺旋階段のぼりつつ夜寒
- 葡萄棚より一本コードらしきもの
- セシウムだかなんだかかんだかあれは百舌
- 抱き寝して咲かす夜長の古どけい
- ピアニカの音ふはふはと秋澄めり
- 逢うという言葉似合わぬ峰不二子
- 秋の夜や電話コードの爪大事
- 延長コードを隅へ隅へと秋のくれ
- 恍惚と枕流るゝ銀河かな
- 橋で逢う力士と力士秋うらら
- ヘッドホンコードかばんの底にある
- 物憑きて萩真つ白に乱れけり
- レシートの丸みに秋の日付かな
- 落鮎は鮎に逢えるか僕は寝る
- 蛇穴にコードあたしの襟足に
来場客は開演前に、この中から「特選(ベスト1)」1句に☆、「並選(好きな句)」6句へ○、「逆選(文句つけてやりたい句)」1句に×をつけ、スタッフに提出しました。
ひろこ選
私の選んだ句は以下のとおり。
- ☆ 逢わないと決めた「ばーか」にくまん食う
- ○ この先は未来コード引き抜け流星
- ○ 冷めて色濃い芋の煮っころがし淋し
- ○ 死んでいて月下や居なくなれぬ蛇
- ○ 葡萄棚より一本コードらしきもの
- ○ 秋の夜や電話コードの爪大事
- ○ 物憑きて萩真つ白に乱れけり
- × セシウムだかなんだかかんだかあれは百舌
出演者選
出演者のみなさんが選んだ句です。
- わが句あり秋の素足に似て恥ずかし :長嶋○、米光○
- 立冬や余震慣れして座ってる :米光○
- きちきちを四つ飛ばして逢瀬かな :長嶋○、米光○
- ぞうさんのしっぽはコードだよ月夜 :堀本○
- 東京は空がじょうずに澄むところ :池田○、堀本○
- 一目惚れ多発九月の逢魔ノ辻 :米光×
- すこやかに未来あるべし小鳥来る :千野○、池田○
- 逢わないと決めた「ばーか」にくまん食う :池田○
- 燈火親しもつれしコードそのままに :池田○
- 冷めて色濃い芋の煮っころがし淋し :千野☆、長嶋○、米光○、堀本○
- ボールペン回す間に恋となる :池田×、米光○
- 白桃のまだ決まらないほくろの場所 :堀本○
- 死んでいて月下や居なくなれぬ蛇 :千野○、長嶋○
- 詩へ螺旋階段のぼりつつ夜寒 :長嶋○、池田○
- 葡萄棚より一本コードらしきもの :千野○、長嶋☆、池田☆
- 抱き寝して咲かす夜長の古どけい :長嶋×
- ピアニカの音ふはふはと秋澄めり :千野○、池田○
- 秋の夜や電話コードの爪大事 :千野○、池田○
- 恍惚と枕流るゝ銀河かな :堀本☆
- 橋で逢う力士と力士秋うらら :千野○、米光☆、堀本○
- ヘッドホンコードかばんの底にある :千野×、堀本×
- レシートの丸みに秋の日付かな :千野○、米光○
- 蛇穴にコードあたしの襟足に :長嶋○、堀本○
やー、今回もすんごい楽しかった! 池田澄子さんはとても素敵でかわいらしい方だったし、東京マッハズ(そんなユニット名ではないです)の4人が池田さんを前にキャッキャウフウフしてるのもかわいかったなあ。特に池田さんの隣に座る米光さんがぽーっとしてるように見えたのだけれども!
そうそう、今回はVIP席(千野さんいわく「K-1でいうところの藤原紀香の位置」)の豊崎由美さん、佐藤文香さんらも解釈にぐいぐいと参加されていてこれもすごく面白かったです。豊崎さんの解釈の鋭さ*1に「おおお」と会場がどよめいたり、また佐藤文香さんは(マッハズに対立するプロレスラーといったオモムキの)激しいコメントを連発して新たなみどころを生んでいました。
そういう「大御所を前に緊張したりおもねたり」「強気な若手と対立したり」みたいな関係性であそぶ寸劇がところどころで生まれたのもライブなおもしろさだったなあと。
* * *
印象強かった句や場面の一部を。
- 冷めて色濃い芋の煮っころがし淋し
- 池田さん以外の4人が投票していた時点でこれが池田さんの句だとわかり、解釈1句めからいきなり沸く会場。 私もこれ選びました。冷たい芋の煮っころがしのむなしいしょっぱさ、自分ひとりしかいない食卓を思い浮かべて。
- 死んでいて月下や居なくなれぬ蛇
- 「死んでいる」から「居なくなれない」という二重否定で存在感がでるのカッコイイ、しかしカッコつけてる感じもするね"月下や"がね、とのマッハズの解釈にVIP席の佐藤文香さんが「ちょっと待ったー!(←こんな言い方はしてません)」と入ってきてこの句のすばらしさをバシッと解説、スゲー(解説も、勢いも)と沸く会場。長嶋さん「(佐藤さんは)俳句甲子園出身だから議論慣れしてるんだよ!」。
- 橋で逢う力士と力士秋うらら
- 「力士と力士が橋で"逢う"、その画がおもしろい。ちょっとBLじゃない?*2」などの解釈がかわされた。詠んだ長嶋さんは相撲八百長メールが元ネタであると明かし、八百長メールトーク*3で会場爆笑。 絵文字で表す「つっぱり」!
- すこやかに未来あるべし小鳥来る
- 俳句とは"ささやかな発見"を詠むのがおもしろいらしいと思いかけていた私は「すこやかに未来あるべし」の普遍っぷりに戸惑ったのだけど、解釈で千野さんが「去年だったらこの句は選ばなかった」とコメントしていてなるほどなと思う。 しかもこれ、ゲストの池田澄子さんに向けた挨拶句だそうで <"す"こやかに"み"らいあるべし"こ"とりくる> と折句、なおかつ"小鳥来る"は秋の季語である、などなどたくさんの技が編まれていると。詠み人・堀本さんによってひとつひとつ隠しワザがほどかれるたびに「わあ」と驚嘆する会場。前回でもそうだったけど、イベントが終わるころには堀本さんをハート目で見ていました。堀本さんの俳句かっこいいんだよ!
* * *
30句中18句に対して解釈がおこなわれたけれども、3時間じゃ足りない。半日ぐらいかけて全部解釈ききたいです。観客も一緒に選句しているから解釈のときの「なるほどー!」「やられたー!」のグルーブがたまらないんよね。俳句で興奮するんだもんなあ。私は俳句はぜんぜんわからず長嶋さん目当てでvol.1から行きはじめたけど、すっかり東京マッハのファンとして次回がもう楽しみだや。佐藤文香さんたちとの対立構造の展開にも期待。
あと個人的にはピースの又吉直樹さんが観客として私の目の前に座ってたのが嬉しいやら緊張するやらで、「私の地元で、又吉さんが、長嶋さんのトークに笑ってる!」(←いちいちやかましい)とかいってなんだか私にだけ3倍ほどファンタスティックなライブとなりましたありがとうございました。
詠み人
イベントの最後にすべての句の詠み人が明かされました。
- わが句あり秋の素足に似て恥ずかし 池田澄子
- 立冬や余震慣れして座ってる 長嶋有
- きちきちを四つ飛ばして逢瀬かな 堀本裕樹
- ぞうさんのしっぽはコードだよ月夜 米光一成
- 東京は空がじょうずに澄むところ 千野帽子
- 自動車の動きは丸く秋うらら 長嶋有
- この先は未来コード引き抜け流星 米光一成
- 一目惚れ多発九月の逢魔ノ辻 千野帽子
- すこやかに未来あるべし小鳥来る 堀本裕樹
- 逢わないと決めた「ばーか」にくまん食う 米光一成
- 燈火親しもつれしコードそのままに 堀本裕樹
- 冷めて色濃い芋の煮っころがし淋し 池田澄子
- ボールペン回す間に恋となる 長嶋有
- 白桃のまだ決まらないほくろの場所 千野帽子
- 死んでいて月下や居なくなれぬ蛇 池田澄子
- 詩へ螺旋階段のぼりつつ夜寒 堀本裕樹
- 葡萄棚より一本コードらしきもの 米光一成
- セシウムだかなんだかかんだかあれは百舌 池田澄子
- 抱き寝して咲かす夜長の古どけい 千野帽子
- ピアニカの音ふはふはと秋澄めり 堀本裕樹
- 逢うという言葉似合わぬ峰不二子 米光一成
- 秋の夜や電話コードの爪大事 長嶋有
- 延長コードを隅へ隅へと秋のくれ 池田澄子
- 恍惚と枕流るゝ銀河かな 千野帽子
- 橋で逢う力士と力士秋うらら 長嶋有
- ヘッドホンコードかばんの底にある 米光一成
- 物憑きて萩真つ白に乱れけり 堀本裕樹
- レシートの丸みに秋の日付かな 長嶋有
- 落鮎は鮎に逢えるか僕は寝る 池田澄子
- 蛇穴にコードあたしの襟足に 千野帽子