親指

いま友だちにメールを打っていたのだけど、文中に「ナイスタイミング」と使ったところ、つい魔が差してそのまま「ー」と長音を足してしまった。

つまり「ナイスタイミングー(ゥ)」だ。頭の中では、もちろん例の女(ひと)が例のとおりに言う。

彼女の声(と親指)が記憶から蘇ると、たちまち私の胸は青々しい香ばしさでいっぱいになった。そんな時代もあったねと。

この香ばしさを共有できればと思い、私は勇気を出して長音をつけたままメールを送ってみた。

反応は、まだない。