取り急ぎ、長嶋有大絶賛

ある方の日記で長嶋有作品2作品が良い感じで紹介されていて、嬉しくなってつい一方的で意味不明な乙女コメントを残してきてしまったので、改めて自分ちで絶賛します。
あのね。ここ1ヶ月ほどでどっぱまりしております、長嶋有

電化製品列伝

電化製品列伝

電化製品列伝

本の雑誌』で2人の書評家が紹介していて興味を持ち(特に帯裏に書かれているらしい俳句に)、さっそく買って読んでみたのが1ヶ月前。これ、書評ボンなんだけど・・・・・・書評に感動して泣いたのは初めてです。私の知らない作品ばかりがとりあげられているので*1長嶋有が絶賛している作品が私にとっても面白く読める作品かはわからないけれども、とにかく長嶋有という人の愛あふれる観察眼にはヤラレました。むしろ、あまりに彼の文章に惚れてしまって、できれば評されている作品は読まないでいたい*2という書評ボンとしては望まれない結果を招いています。でも高野文子棒がいっぽん (Mag comics)』は買いました。ちょうど地元の本屋で唐突に高野文子フェアをやっていたから(なんでやってたんだろう)。不思議な作品だった。
『電化製品列伝』は、そして期待していた帯裏の俳句が、色っぽくていい。

猛スピードで母は (文春文庫)

猛スピードで母は (文春文庫)

猛スピードで母は (文春文庫)

間髪入れずに。まさに猛スピードで。「サイドカーに犬」も表題作も良かった。おおげさでないけど愛はそこにある、そして登場する女性がみんな、骨格がしっかりしてそうなイメージがあって、サバサバしてるけど色っぽい。母であっても女だし、大人になっても子どもであるところ、むしろ大人だから子どもっぽい感情を素直に出すようになっていることなんかが丁寧にやさしく描かれていて、短さと読みやすさも手伝って、あっというまに読んでしまった。で、読み終わった10分後には本屋で次に読む長嶋作品を探していた。

パラレル (文春文庫)

パラレル (文春文庫)

パラレル (文春文庫)

これも面白かった。大好き。『猛スピードで母は』に比べて分厚いので大丈夫かな、と思ったんだけど、土曜日に買って、なんとその日のうちに読み終えてしまうという。ペース配分という言葉を知らない27さい。
この小説も、何か大きな事件やテーマがあるわけじゃなくて、登場人物すべてがひとしくいとおしく描かれていて、いい気持ちになれた。春先の夜風のようにやさしくて心強い気持ち。最後の主人公の祝辞は、なんとなく、谷川俊太郎の「祝婚歌」を思い出した。

いろんな気持ちが本当の気持ち

いろんな気持ちが本当の気持ち

いろんな気持ちが本当の気持ち

「いくら好きだからって、ひとときに一度に摂取するといつだって飽きるのが早かったじゃないか」と、減らないお茶漬けの素*3を前に学習し、「いったん!いったん、ね!」と自分に言い聞かせ、『パラレル』読後は友人に進められた伊坂幸太郎ラッシュライフ (新潮文庫)*4を読み始めたのだけど、これがもう、進まないこと進まないこと。けっして伊坂幸太郎が好みじゃないわけではなくて(『本の雑誌』に掲載されていた彼のエッセイはとても面白く読んだ)、ただ私は、しばらくのあいだ長嶋作品の"大きな事件は何もなく ひとりひとりが丁寧に描かれた世界"に癒され続けていたため、伊坂作品の、というかミステリーとしては当然かつ大前提の"不穏に満ちていて、出てくる人がみんな怪しい"という状況にストレスを感じていたのだった。だったら読むなと。しかしついには『ラッシュライフ』の数行を読むごとにため息をついては、本から顔を上げて「長嶋センセイに会いたいな・・・・・・」と(本当に声に出して)つぶやくという症状にまで発展。単に長嶋作品が読みたいだけで、別に作者に会いたいわけではないはずなのに、自分のハマりようをわざと恋に転換し、読みたくないなら読まなきゃいいのに「伊坂センセイに恋を邪魔されている」と思い込むことでいっそう長嶋熱を上げるという方法。え、なんですって?あ、はい、ばかです。伊坂先生および関係者各位はすいません。『ラッシュライフ』も平常心で読めば面白いと思います。
・・・・・・と、導入が長くなってしまったが、その『ラッシュライフ』のストレスに耐えかねて購入したのが『いろんな気持ちが本当の気持ち』。はじめは「朝は『ラッシュライフ』を、夜は『いろんな気持ち〜』を読み分けることでストレスが軽減されるのでは」と目論んでいたのだけど、夜に読んだ『いろんな気持ち〜』がやっぱり好みすぎて朝も読むようになってしまい、購入の3日後に週末が来て、そこで一気に読み終えてしまったエッセイ集。私も長嶋センセイのポンポン板井になりたい。

泣かない女はいない (河出文庫)

泣かない女はいない (河出文庫)

泣かない女はいない (河出文庫)

もう観念して、好きなものは好きな気持ちが強いときに好きなだけ摂り込むことにした。それで恋のおわりが早まったっていい。彼を恋うる日々は確実に私の人生を豊かにするもの。
で、この本はおととい買って、表題作を今朝の通勤電車で読み終えたところ。小説の導入部で淡々と説明されていく状況が、工場や倉庫や伝票整理といった色も色気もない光景ばかりだったので、こんどばかりはハズレかな、短い恋だったな、と寂しい気持ちで読んでいたのだけど、しかしいつのまにか、これらコンクリートやスチール机の世界も徐々に色気を帯びだして、それはつまり主人公・睦美の気持ちの変化によるものなんだけど、睦美と同じ足取りで読み進むことができた。
そしてまた、この作品のタイトルは「猛スピードで母は」「サイドカーに犬」のように文中の一節をそのまま使っただけなのかと思っていたら、最後の最後にちゃんと呼応していてゾクリとした。読み終わって顔を上げると、地下鉄の窓に、うすら笑いの女が映っていた。
そして続けて「センスなし」を読み始めたところなんだけど、冒頭の主人公の「聖飢魔IIが好きだったが、良さを相手に理解させるのが面倒で、人の前では聞かないようにしていた云々」というところにものすごく共感。続きを読むのが楽しみ。

スポンジスター

丸善長嶋有コーナー*5にビニールパックされて1冊だけ置かれていた謎の本。『スポンジスター』とあるだけで、著者名も記事タイトルも何もない。ビニールパックされているから内容の確認もできない。
ネットで検索してみると公式サイトにあたり、ブルボン小林名義で出した1500部限定の同人誌らしいことがわかった。そういえばひところ、このタイトルをあちらこちらで目にした記憶はある。しかしサイトで参加著者を見てみると、特定の人には相当贅沢な本であることがわかってとりあえず丸善最後の1冊(たぶん)を購入。貴重さに弱い。まだ読んでませんが、たぶんしばらく読まないと思うので*6興味あるおともだちはお声かけください。ただし貴重っぽいので返却期限は設けます。
*7

*1:扱ってる作品についてはこちら→http://shop.kodansha.jp/bc/books/topics/denkaseihin/

*2:読んでみて「彼が言うほど素晴らしいとは思えない」と思いたくない、価値観の違いを認めたくないという恋心

*3:参照:http://d.hatena.ne.jp/hiloco/20090222

*4:友人は「ラーメンズのコントみたいだよ」と言って貸してくれたが、はたしてそうだろうか

*5:関係ないけど丸善丸の内本店の小説コーナーは、作家の出生年代別に分けられていてすごく面白い。自分の周りで評判である作家の多くが'60年代後半〜'70年代前半生まれだということに興奮してしまった

*6:内容が濃そうすぎて恋から醒める恐れがあるから

*7:はてなのイベント「今週のお題」とやらのテーマが"私と読書"であると今知ったので、追ってエントリしたいのだがなかなか「含む日記」に登録されない・・・・・・