だれかのいとしいひと (文春文庫)

また角田光代で夜を明かしてしまった。
早く寝るつもりがなかなか寝つけず、通勤中に読むことにしていた『だれかのいとしいひと』をためしに開いてみたら、読み終わる頃には、夜が薄らいでいた。おもしろかったのだ。
角田光代作品の感想でよく見かける「家族にも恋人にもすれ違いの他人にも等しい距離で興味を持っている」というのがよく感じられたし、そういう視点で人や物事を見ている各章の主人公たちの、病的に淡々とした粘着質なんかがせつなくて、おもしろくて、どんどん眠気を覚ましていってくれた。
巻末の枡野浩一氏の解説まで角田作品のひとつのような雰囲気にしてあり、それに満足し、本を閉じた。が、その解説の中で「酒井駒子が装画と挿絵を担当」とあったのを思い出して、はて、どんな表紙なのだろうとブックカバーをはずしてみた。
(私はまだこの本の表紙を知らない。この本はおともだちから借りているもので、書店のブックカバーがかけられているそのままの状態で読んでいたから)
まだ青暗い明け方の光の中で、今この時間と同じような空の下に佇む女の子の絵。なるほど、酒井駒子・・・と思ったその次の瞬間、本に巻き付いている帯に目がいった。表紙絵の、明けるのか暮れるのか微妙な空の色なんてまったくおかまいなしといった真っ赤な帯だ。そこには自信満々にこう書かれていた。

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負け犬は関係ないだろ。

だれかのいとしいひと (文春文庫)

だれかのいとしいひと (文春文庫)