イッセー尾形一人芝居

  • 19時開演/於 原宿クエストホール

新作7本。一番新しい作品が一番面白いというのは、ものをつくり表現者として一番格好いいことだと思う。
久しぶりにネタバレと感想書きます。まだまだ公演は続くので、「続きを読む」。あとおそらく、来年にはDVDでも出ますのでお気をつけて。

※タイトルはすべて仮

  1. ステーキハウス
  2. イベント屋
  3. ライブハウス
  4. 取調室
  5. 手相見の男
  6. 大家族〜2005夏
  7. ストリートミュージシャンin魚津

『ステーキハウス』は、閉店後の店内ミーティング(反省会)。フロアスタッフリーダーらしき男(店長ではない)がミーティングを仕切る。おとなしく弱気な態度の男だが、何度も「ワタシからひとつだけ・・・」と同じ人間へばかり集中的に注文をつける。が、翌日、男の働きを見てみると・・・。/男がだんだんネチネチとバイトを責め始める様子が我が身にも覚えアリ、で面白かった。カツラなし。私はイッセーさんがカツラなしでやるキャラクターが好きだな。気持ちに「このキャラ面白いんだろうなぁ」という構えをつくらないからかな。
『イベント屋』。「ゼブラギャルコンテストinサファリパーク」というイベントの審査員として招いた落ち目のアイドルがドタキャン。これに対してイベント屋の男が、アイドルの事務所の人間(マネージャー?)に説教をたれる。/金髪ロン毛のカツラ(根元が黒い)、安っぽいテロテロのスーツ。 この男、元ピザ屋の配達員(前回公演ネタ)。配達先の近隣の住民にも同様に説教をたれていた。 イッセーさんと森田さんがつかんでくる、イマドキの若者の言語感覚というのがすごい。難しい言葉を自己流に言うというか・・・、ネタの中で「俺、アンタに説教してますから。教え説いてるんすよ?」「俺みたいなピザ屋あがりの男に説教されてアンタ、ジクジっしょ?」←“忸怩たる思いだろう(恥ずかしいだろう)”という意味だと思う。笑った。つかう。
『ライブハウス』。これもクローズしたライブハウス、のステージを掃除するスタッフの女の子が、掃除中にマイクをどけようとしたらまだ音が入っていたので、そのままマイクで遊ぶうちに歌手になった気分で自作の曲を歌いだす。/彼女自身、そういうのが好きだからライブハウスで働いてるんだろうな〜と思えてかわいらしくてせつなかった。
『取調室』。夫を殺したという女が取調べを受けている。事件について詳細を語る、も、取調べの担当者が変わり、再度同じ質問を受けると今度は・・・。/妙にライティングが素晴らしかった。取調室のひんやりとした気温(知らないけど。たぶん適温なんだろうけど)を思わせる青緑がかったあ白い光に窓枠の影。それにくわえて上手から女を赤いライトが照らす。赤いライトは真横からなので、女を正面から見る限りでは赤さはそれほど感じないのだけど、下手の壁に赤く大きく映し出された女の影が殺人者としての恐ろしい内面を映しているようで不気味で良かった。 昔の作品を見返して比べたわけじゃないけど、近頃のイッセーステージは照明にハッとさせられることがある。
『手相見の男』。「この会社の前で、夜、手相見をやってるものですが・・・」とおかっぱ頭の男がある会社を訪ねてくる。男は「この会社の名前が書かれた封筒を拾ったんですが、中にお金が入っていて、数えたら190万円入ってました」「あの・・・・・・僕、10、抜いてませんからね?」。 男はとにかく「僕は10万円、抜いてない」と主張。お金を拾ってくれたお礼に会社側が謝礼を用意するも、拒否し、しかし「僕が謝礼を拒否したのは、すでに10、抜いてるから、というわけじゃないです。市民の義務を果たしたから謝礼をもらうまでではないという意味です」としつこい。会社の人間たちはひたすら「疑ってない」と言うのに男は「抜いたと疑ってるんじゃないか」と疑い、ついに会社に日参することに。/こういう、“単純な話を複雑にしてわかろうとしない面倒な男”ってのが好きだー(ネタとして)。このネタが終わったあとの幕間で、私のうしろから「吉田戦車の世界だねー」との話し声が。そうかな?そうかも?
『大家族〜2005夏』。子どもたちが働き始めた。新聞配達にファミレスにコンビニ。よく働く子どもたちが誇らしいお父さん。「俺が仕事にいかなくなったら、自然と子どもたちが働くようになった」/子どもたちの、父親が仕事(工事関係?)でアスベストの被害に遭ってるから仕事に行かなくなったんじゃないかという心配をよそに、「アスベスト、あらぁウナジがチクチクして」と嬉しそうに語るお父さんが良い。「転職の本買ってきて読んだらよぅ、もう転職した気になっちゃったの。だから現場行かなくてもいいかなーって」
ストリートミュージシャンin魚津』。流浪の旅で魚津に来ていたストリートミュージシャンの男が、駅のコンビニ前で歌っていたところを地元のおばちゃんに声かけられ、縁がつながりにつながって地元のラジオ局に出演することに。/魚津に対してなんの愛着も沸かしてない男の失礼ぶりが面白かった。しかも即興でつくったという魚津の歌がなかなか良い。今回は歌ネタが2本もあって嬉しかった。


思ったのは、森田さんとイッセーさんの観察力もあれど、時が進めば進むぶんだけ彼らは新作をつくることができるんだな、と。イベント屋なんて職業とその性質、数年前じゃまだ確立してなかったと思うし。 かと思えば、時代によらない『取調室』『手相見の男』みたいなネタもあるし。アスベスト、なんてのも(笑)。
以前も書いたかもしれないけど、子どもの頃から見ているイッセー尾形、私が大人になればなるほど面白く感じられるのは、私の人生の経験値が増えているからだけじゃなくて、彼らがずっと現役でいるから、進化しつづけているからというのもあるだろうと思う。かっこいいな。本当に。