深夜の馬鹿力

半分まで聞いたんだけど、冒頭の堀江社長インタビューで少し思ったこと。
インタビューの設定は、伊集院さんが、リスナーへのプレゼント予算や伊集院&スタッフたちのポケットマネーを合わせた30万円でニッポン放送株を40株*1買い、それを堀江社長に見せびらかして欲しがる堀江社長の弱みにつけこみニッポン放送の経営に携われるよう頼んでみようというネタ仕立て。オールナイトニッポンやらせてくれ、など(笑)。 しかし当然40株程度じゃビクともしない堀江社長、しかも「今ライブドアは個人から株を買えないんですよ*2」と一蹴されて「無駄買いだったの?」とがっかりする伊集院とスタッフ・・・というオチ。 「向こうが35%保有*3してるんなら‘40’のほうが数字が大きくて勝てると思ったのに」と不思議がる伊集院さん。
ま、この冒頭のネタ自体(ネタつっても実際に番組予算とポケットマネーで買ったらしいけど)はおバカで面白かったんだけど、このインタビューの中で堀江社長が おなじみの「現在の放送業界の古びた体制」論を得意げに話しているとき、その中の発言が少し気になった。
「既存のメディアは作り手側のコンテンツを一方的に流している部分が大半で、受け手のニーズをつかみきれていないんですよ。それに比べて韓国は進んでいる。冬ソナも、もともとはヨン様の役は死ぬはずだったけど、視聴者から『死なせたらお前の局の番組は今後一切見ない』という抗議メールがたくさん届いたために書き直されたんです。日本の放送にもっとネットが浸透すれば、視聴者の望む番組作りができるようになる」・・・一言一句メモっていたわけではないけど、たしかこんな内容だったような。
私がこの発言を「えー」と思ったのは、「視聴者の望む番組作り」で「最高の番組」が作れると思い込んでいるんじゃないかこのヒトは、と受け取ったから。 「視聴者が望む」って言ったって、その「望んでいる視聴者」ってのは制作局に直接抗議をしてくるヒトのことを指すんでしょう。番組に不満を感じない視聴者はわざわざアピールしないわけだから。しかもアピールしてくる意見が複数あった場合、その中でも大多数を占める意見に依ってしまえば「アピールが得意なヒトたちの趣向」に合う番組ばかりになってしまうじゃない。 私は韓国のドラマをひとつも見たことがないので聞いた話を鵜呑みにしてはいけないけれど、韓流ドラマがどれも設定や内容が似ていると言われているのはそういう理由なのかなぁと思った。
それに制作側が視聴者の意見を「参考」にするのではなく「言うとおり」にしてしまうなら、もうそれは制作者として機能していないじゃない。 韓国の番組制作スタッフがどういう構成なのかは知らないけれど、少なくとも日本には放送作家という職業があって、彼らの生み出す番組の個性を視聴者が好んだり嫌ったりすることで多種多様な番組が成立するんでしょ。
堀江社長が以前からこの考えを持っていたかどうか、それとも追い詰められた今、苦し紛れのネットのメリットアピールのひとつとしてついでに出た意見なのかはわからない。このたびの株騒動も勝手にやってろとか思う。けど、こんなに偏った考えを持った人が 思い通りに事を運べる資金と行動力を携えて表現(=番組制作)の場へ出入りするのは、あまり穏やかではないなーと感じた。


伊集院さんはといえば、インタビューの中では始終「そうですよねー!」と“長いものには巻かれ隊”の構えで堀江社長にむかってヘーコラしていたのだけど(もちろんネタでね)、でもこの堀江社長の発言に対しては「ほぅ・・・」と肯定も否定もせずに受けていた。 そしてインタビューのテープを聴き終えたあとのトークで、「果たしてそれ最善のやり方だろうか」と疑問を投げていたり。 「そうじゃなくて、『ヨン様は死なせるけど、でもすごく面白いものをつくるから』と約束するのがモノづくりの人間の役割だと俺は思っている」という伊集院さんの言葉が頼もしいと思った。

*1:購入時は1株6700円台だったとか

*2:これがTOBってやつ?

*3:インタビュー収録時の保有率?