ダブルブッキング初単独LIVE『ソプラノ』

  • 7/17(土) 18:30開場/19:00開演
  • 於 シアターD(渋谷)

ダブルブッキング初単独LIVE『ソプラノ』

  1. 監禁
  2. 【映像】オープニングフィルム
  3. ゴールテープ
  4. 【映像】スーパーマリオさん−1面「カメを踏む」
  5. 203号室にて・・・
  6. 【映像】スーパーマリオさん−2面「キノコを食う」
  7. あれっ?
  8. 【映像】振ってくる
  9. 自殺
  10. 【映像】釣り
  11. 背後霊
  12. 【映像】スーパーマリオさん−3面「仕事をもらう」
  13. 笠地蔵
  14. 【映像】スーパーマリオさん−4面「ピーチ姫を助ける」
  15. セーブ
  16. 【映像】エンディングフィルム

※「監禁」と映像タイトルは仮称です

監禁
台の上には黒いビニールのゴミ袋。袋はガサガサと動き出し、台を落ちてしまう。 ビニールを破り出てきたのは、手を縛られ口から血を流している黒田。己の身に何が起こっているのか把握できず、怯えている。  そこへ白い仮面をかぶった男が登場。手にはバット。何も言わずに黒田を殴りつける。うめくことしかできない黒田。  ふと仮面の男は片手に白い手袋をはめ・・・そのまま去っていった。  黒田はやはり状況が把握できない。  震える黒田のもとに仮面の男がケーキを運んでくる。そして男が仮面を取ると・・・  「あっ、川元」「うん、俺。誕生日おめでとう!」「おめでとうって、お前、これ・・・」「あぁ、これ?お前をびっくりさせようと思って。びっくりした?」「うん、びっくりした」
ゴールテープ
真夏のマラソン大会。ゴール地点に佇む男。教頭先生と黒田先生。 今年は佐藤が校内新記録を出しそうだ、と意気込む教頭、ゴールテープを持つ手にも力が入る。 バカバカしくなってきた黒田先生は、あれこれと理由をつけてゴールテープを離そうとするも・・・。
【映像】スーパーマリオさん−1面「カメを踏む」
あ、マリオさん。マリオさんってよくカメを踏んでますよね。そうだ、ちょうどここにゾウガメがいるんで、ひとつお願いします。   マリオさん、動物園の警備員に怒られるの巻。
203号室にて・・・
おい川元、どうしたんだよお前。何回かけても電話に出ねぇし、心配になって来てみたらズボン履こうとしたまま固まってるし。 「俺・・・地雷踏んじゃったんだ」
【映像】スーパーマリオさん−2面「キノコを食う」
あ、マリオさん。マリオさんってよくキノコ食べて大きくなってますよね。そうだ、ちょうどあの木の根元にキノコが生えてるんで、ひとつお願いします。   マリオさん、森の中心で嘔吐の巻。
あれっ?
すいませーん。ちょっと最近、ケータイの調子がおかしくて。電源を入れてもすぐ消えちゃうんですよねー、買い換えたほうがいいですかね?・・・・・・って、あれっ?   ケータイショップの店員さんは至って普通の男性だった。鼻血を流してブラをつけているということ以外は。
【映像】降ってくる
てくてくと道を行く黒田。すると向かいから突然「めーんっ!」竹刀の男(川元)がすれ違いざまに面を入れてきた。 あれ?おかしいな、いま一瞬、頭に衝撃が。気のせいかな。 再び歩き出す黒田。そして再び「めーん!」。 今日はよく降るなぁ、と思って黒田、傘を広げて降竹刀対策。   「どーうっ!」傘をさしても意味ないか。
自殺
「もしもし、川元・・・?今までいろいろありがとう・・・さよなら」 親友・黒田からの意味深な電話に危機を感じ、取るものもとりあえず駆けつけた川元。急いで出てきた、が故に美容院でパーマをかけてる最中だった川元の頭にはビニールキャップ、頭上には加温促進器を従えて。 友情って美しい。
【映像】釣り
夏の日、川辺で一人、釣りに興じる黒田。釣れる釣れる、マグロにエビに、玉子焼き。釣れた寿司からその場で醤油をつけてほおばる。最高。玉子焼きはそれほど好まないからリリースしよう。大漁の寿司はアイスボックスにも詰めて。満足げに川辺を離れる黒田。   「めーん!」また降ってきた。
背後霊
有名な霊媒師(黒田)のもとへ男(川元)は相談しにいった。「最近、体が重くって・・・」。そうでしょうね、あなたに憑くのは覆面レスラー。   霊媒師vs背後霊、ガチンコプロレスのゴングは鳴る。
【映像】スーパーマリオさん−3面「仕事をもらう」
あ、マリオさん。マリオさん、最近どうですか?ドンキーコングとかも個別で仕事もらっちゃってるみたいですけど。ヒマなんじゃないすか?もらいにいきましょうよ、仕事。そうだ、ちょうどそこが任天堂東京支社ですんで、ひとつお願いします。   マリオさん、受付嬢に苦笑いされるの巻。
笠地蔵
「みんな、行っちゃったなぁ・・・」地蔵が2体、雪の中。仲間は笠の恩返し。「でも俺はムカついてるよ。なんで俺だけ手ぬぐいなんだ」「あのジジイ、恩返しされるのわかってやってたからね」「それにしても俺、地蔵が動けるなんて知らなかった」
【映像】スーパーマリオさん−4面「ピーチ姫を助ける」
あ、マリオさん。よく会いますねマリオさん。ところでマリオさんの最終的な目標ってなんでしたっけ?ピーチ姫を助ける、ですよね。そうだ、ちょうどここは渋谷ですし、道行く女性の中にもピーチ姫はいるかもしれませんよ。ピーチ姫の電話番号、聞いてきてください。ひとつお願いします。   マリオさん、あっさり手を振り払われるの巻。
セーブ
最近の川元はついてるよな、競馬も当てるしキレイな彼女もつきあうようになったし・・・。 「俺は人生をセーブしてるんだよ」 ゲームのようにセーブしたところまで人生を戻せたら、何も恐くない。何だってできる。


全体的なあらすじもあれば設定や導入部分しか書いていないものもありますが。



こんなにも大きな可能性を秘めた原石を見つけられることはめったにないと思う。
原石、といってもすでに今年の9月で結成6年*1となる彼らだが、芸人としての世間的な認知度や初の単独ライブ開催という点から、今の段階の彼らを安易に原石と言わせてもらう。
設定の発想と言葉選びがとにかく既知の例を思いつけないほど個性的で、これで彼らがもっと豊富な手法と自由な予算を持ち合わせていれば・・・と思うとシアターDはもう小さすぎる。 表現方法や経済的な枠なんて、走り出したら急速に広がっていくのだし、彼らのライブがプラチナチケットになる日もそう遠くない。


「血」とか「死」とか「地雷」とか「暴力」とか、そういう絶対的な意味を前にして「そんなことよりも」とまるで重要なことではないかのように流してしまえる川元と、流していいものなのかと疑問に思いながらも「川元が言うなら」と素直に流す黒田。この関係が絶妙。どんなに酷い状況に陥れられても激昂しない黒田のおかげで、2人の会話はズレたまま進んでいく。続いていく。
言葉選びも、微量に毒が含まれていながらバカバカしくて、独特だけど重くない。


・・・などと偉そうな、わかったような口ぶりで、実は何も言ってない、っていう。だって言葉を知らないんだもーん。えへ。
でもねぇ、歴史を先取りしたみたいな気がしました。近い未来には誰もが「ダブルブッキングってすごいよね」「ライブに行きたいけどチケット取れない」と口々に言い合うのを知ってる気分で見る初単独。バック・トゥー・ザ・フューチャー。
ま、今ここであんまり「すごいスゴイ」と煽って次回のチケットが取れなかったら悔しいのでここらへんでやめときますけど。


使用する音楽にはひとつのコンセプトがあったのかしら、あるとすればそれは「癒し」だったと思う。
私が知ってる曲だけでも挙げるなら、オープニングフィルムのタイトルBGMにバッハの『無伴奏チェロ組曲第1番ト長調BWV1007-第1楽章*2』、映像ネタ『釣り』では久石譲の『Summer*3』、幕間のBGMにはWESの『Kekana*4』など。
コントの中で少しずつ投与される毒に耐性ができた脳を、これら癒しの音楽で浄化しているような・・・と、またここで分析ごっこを始める自分が恥ずかしい。単に気持ちがいいだけ、ネタとのギャップが面白いだけ、その程度なんだろうな、本当は。


あー、いろいろと分析欲を湧かせるような不思議な空間だったんですよホント。でも「絶対的な意味を前にして云々」とかもっともらしいことをどれだけ書いても、ダブルブッキングの2人には「いや、そこまで考えてなかったんですけど・・・」と伏し目がちに一蹴されてしまいそうで。 年齢や芸歴からしても深く考えてないわけがないんだけど、温めてきた期間が長かったからこそなのか、あまりガツガツした印象がなくて、むしろそれが異質に見えたのかもしれない。 あとものすごい童顔なうえに表情がないから、何考えてるのかわからないというのも本当のところ。


芸風がちょっと個性的な芸人って、いや、芸人に限らず表現者は誰でもそうなのだろうけど、異質なものをやろうとするときにどうしても「俺がこの分野のパイオニア。すげーだろ?」みたいな態度を取ることがあるでしょう。 それは表現活動のモチベーションとして必要な傲慢さなんだけど、ダブルブッキングにはそれがないような感じがした。自分たちが面白いことをやってるということに気付いてすらいないような。だからこちらもうっかり無防備な状態で見てしまって、ヤラレてしまう。


私は、思い入れの強い作品ほどレポートや感想が書けない臆病な人間で、というのも、「あれを書こう」「これも書かなければ」と考えあぐねているうちにだんだん勢いが落ち着いてきて、しまいには「自分の稚拙な文章であんなに素晴らしい作品に言及してしまっては申し訳ない」という結論にたどり着き、日記上では何もなかったかのように振舞うことしかできないという、とどのつまりはナルシスト。
でもそんな自分スキーの私でも「これは記録として残しておかなければならない」と妙な義務感に駆られて、このライブの翌朝6時に起床し、あーでもないこーでもないと唸りながらこのレポを書いております。
私が伝えたいことのすべてはこの文中の言葉だけでは足りなくて、要は二度寝王の私を日曜の早朝に起こしてレポを書かせているという事実がすごいんだと言いたいんですよ。お願い、わかって。 でも「それだけ熱量が高いなら帰宅後すぐに書けばよかったじゃないか」というごもっともなご意見に対しては「夜は眠かったので」としか答えられません。

*1:平成10年9月デビュー

*2:例が通じる対象が狭くて申し訳ないけど、ラーメンズ第9回公演『鯨』内「器用で不器用な男と不器用で器用な男の話」で流れるあの曲です

*3:言うまでもなく映画『菊次郎の夏』のあの曲

*4:2000年春頃に放送された「キリン生茶」BGM。これも癒し系